“科学の良心”
懐疑的思考とは、筋の通った議論を組み立てたり、それを理解したりするための手段である。わけても重要なのは、人を惑わすごまかしを見破ることだ。大切なのは、推論によって引き出された結論が気に入るかどうかではなく、その結論が、前提ないし出発点からきちんと導かれたものかどうか、そしてその前提が正しいかどうかなのである。
── カール・セーガン(『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』)
1996年12月20日 カール・セーガン 没。
天文学者にしてSF作家。
偏見の無い彼の懐疑精神は“科学の良心”である。
カール・セーガン博士は懐疑的思考をするための“道具”として、以下のような例を挙げている。
『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』より抜粋。
- 『裏付けを取れ』 ── 「事実」が出されたら、独立な裏付けを出来るだけたくさん取るようにしよう。
- 『議論のまな板に載せろ』 ── 証拠が出されたら、様々な観点を持つ人たちに、しっかりした根拠のある議論をしてもらおう。
- 『権威主義に陥るな』 ── 権威の言うことだからといって当てにしないこと。権威はこれまでも間違いを犯してきたし、今後も犯すかも知れない。こう言えばわかりやすいだろう。「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいるだけだ。」
- 『仮説は複数立てろ』 ── 仮説は一つだけでなく、いくつも立ててみること。まだ説明のつかないことがあるなら、片っ端から反証していく方法を考えよう。このダーウィン主義的な選択をくぐり抜けた仮説は、単なる思いつきの仮説に比べて、正しい答えを与えてくれる見込みがずっと高いはずだ。
- 『身びいきをするな』 ── 自分の出した仮説だからといって、あまり執着しないこと。仮説を出すことは、知識を手に入れるための一里塚にすぎない。なぜそのアイディアが好きなのかを自問してみよう。そして、ほかのアイディアと公平に比較しよう。そのアイディアを捨てるべき理由が無いか探してみよう。あなたがそれをやらなければ、他の人がやるだろう。
- 『定量化しろ』 ── 尺度があって数値を出すことが出来れば、いくつもの仮説の中から一つを選び出すことが出来る。あいまいで定性的なものには、色々な説明が付けられる。もちろん、定性的な問題の中にも深めるべき真実はあるだろうが、真実を「つかむ」方がやりがいがある。
- 『弱点を叩き出せ』 ── 論証が鎖のように繋がっていたら、鎖の輪の一つ一つがきちんと機能しているかどうかをチェックすること。「ほとんど」ではなく、前提も含めて「すべて」の輪がきちんと機能していなければならない。
- 『オッカムのかみそり』 ── これは使い手のある直感法則で、こう教えてくれている。「データを同じくらい上手く説明する仮説が二つあるなら、より単純な方の仮説を選べ」。
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