一日一言
十月二十六日 人生の新陳代謝
いつも正しくきちんとして進んでいくものは、年令である。これだけは若い者が年寄りおを追いこすことはできない。そのほかのことでも不変のものばかりとは言えない。昨日まで身分の高い役人であっても、今日になれば、その職をやめさせられ、後輩に先をこされ、その道の達人の腕もいつかはにぶって、弟子のほうがすぐれていると評判になる。立派な心もいったん乱れると理想の人間でも天から落ちる。
末の露もとの雫や世の中の
おくれ先だつためしなるらん
盛者必衰。栄枯盛衰。諸行無常。
だがしかし、
だが然し、持って生れた力量というものは、今更悔いても及ぶ筈のものではないから、僕に許された道というのは、とにかく前進するだけだ。
── 坂口安吾(『青春論』)