NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「ま、しゃあないか」

「【産経抄】7月27日」より
 → http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100727/trd1007270441000-n1.htm

 亡くなった森毅(つよし)さん(82)のあだ名「一刀斎」の由来は、細長い顔が、剣豪作家の五味康祐に似ていたからという。五味には、戦国時代に活躍した伊藤一刀斎の子孫が、プロ野球で活躍する作品がある。あるいは、論評の切れ味の鋭さから、付けられたのかもしれない。
 ▼ただ森さん自身は、自分は「多刀流」なのになあ、との感想を漏らしている。本職は、「関数空間の解析の位相的研究」を専攻する数学者だったが、何より「一途(いちず)になる」のが苦手だった。
 ▼京大教授在任中からテレビ番組に出演して、時事問題をユーモアたっぷりに論じて人気を博す。旧制三高時代は歌舞伎や宝塚に熱中する軟派だったから、何の抵抗もなかった。
 ▼京大に全共闘の嵐が吹き荒れたころ、森さんは「一匹コウモリ」を決め込んだ。つまり当局系、全共闘系、民青系すべてに顔を突っ込んだ。その過労で入院すると、各派の幹部が時間をずらして見舞いに来て、「ここへ来ると、全体の状況がよくわかります」と言ったという。
 ▼そんな経験から、現在の「ねじれ国会」にも楽観的だった。「多様化の時代なんやから、ややこしいのに慣れんと」と語っている。ただ、今の政界に、森さんのような行動力を伴った知恵者がいないのが、最大の問題といえる。
 ▼昨年2月に自宅でオムレツを調理中、服に火が移って大やけどを負い、ずっと入院中だった。フライパンを揺らしたり、傾けたりと、大層骨が折れる料理を、80歳を超えた老数学者がなぜ、との問いかけは森さんに失礼だろう。「老人の自立とは、自由を獲得すること」とも述べていた。ご本人としては、著作の題にもした「ま、しゃあないか」というところか。


森毅 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E6%AF%85


ま、しゃあないか

ま、しゃあないか


数学的思考 (講談社学術文庫)

数学的思考 (講談社学術文庫)