世はいかさま
「無職の元東大生「教科書と違う現実が…」 文科省幹部を殺害予告」(産經新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081129/crm0811291717024-n1.htm
文部科学省の局長らの殺害予告をインターネットのブログに書き込んだとして、警視庁捜査1課は29日、脅迫の疑いで、東京都文京区本駒込、無職、前田記宏(ふみひろ)容疑者(25)を逮捕した。
東大を卒業したが就職していないといい、「理想を持って勉強してきたが、教科書の内容と違う現実があることを知り、文科省にだまされたと感じた」などと供述。ほかに東大教授の殺害予告も書き込んでいたが、元厚生次官ら連続殺傷事件と関連はないという。
調べでは、20日午前8時ごろから午後0時50分ごろまでの間、自宅パソコンで自身のブログに「文科省官僚への殺人予告をしているのは私です。1週間以内に次の者を順次、自宅で刺殺する」などと書き込み、文科省初等中等教育局長ら幹部10人の実名を挙げて、脅した疑い。
『White 〜文彩の支配から論理の支配へ〜』 http://d.hatena.ne.jp/realiste0/
『文部科学省の局長らを1週間以内に殺害すると書いて逮捕された25才の元東大生、その正体と軌跡を追う』(GIGAZINE) http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20081129_realiste0/
彼は知らなかった。
世は“いかさま”だということを。
夏彦翁に曰く、
- 世はいかさまというのはこの世はいかさまから成っているということで、商才とか企画とか言えば聞こえはいいが、なにいかさまのことである。いかさまの才がなければ社員は出世できないし、またその社はつぶれる。
- 大きな声では言えないが、私は袖の下またはワイロに近いものは必要だと思っている。世間の潤滑油だと思っている。人は潔白であることを余儀なくされると意地悪になる。また正義漢になる。
- この世はうそでかためたところで、その縮図は廓(くるわ)で見られるのである。社交界で見られるのである。しかも廓の背後には恐るべき病気がひかえているのである。それなのに男どもは「裏を返す」のである。「馴染む」のである。「身代(しんだい)かぎり」をするのである。「しんぞ命も」と花魁は言ってくれるが、それは金が続く間だけかもしれないのである。それでもなお通いつめるのだから、ここにあるのは廓のそとにはないまことの恋いかも知れない。私が言いたいのはこれは文化だということで、文化はきれいなばかりではない。悪と毒の隣にある。
まじめ人間はまじめくさるからいけないのである。今も昔も私たちに欠けているのは笑いである。
─ 山本夏彦(『何用あって月世界へ』)