NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

『断』読書の秋

「【断 潮匡人】元駐米大使が放った『断』」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081029/acd0810290312001-n1.htm

 駐米大使などを歴任した著者の『村田良平回想録』(ミネルヴァ書房)を一気に読んだ。いま最も刺激的な新刊であろう。ありがちな虚栄や自慢の類ではない。
 例えば「拉致問題については梶山大臣の答弁があったにもかかわらず、何の行動もとらなかったこと悔悟をもちつつ告白せねばならない」と懺悔(ざんげ)する。「実は、核兵器を搭載する米国艦船の日本への寄港と領海通過には事前協議は必要としないとの『密約』が日米間にあった」「政府は(中略)国民を欺き続けて今日に至っている」とも告白する。
 これだけでも購読に値するが、白眉(はくび)は歯に衣(きぬ)着せぬ論評だ。
 「文化勲章まで横田(喜三郎)氏に授与したのは、政府の選考基準自体が狂っていたからであろう」「坂本義和の論文を読んで、よくもかかる頭脳構造の持主が東大の教授になったものだと思った」と一刀両断。「自前の核抑止力を保有するのが最も正しい途」とも明言する。小欄が手本とすべき見事な「断」と言えよう。
 外務省にも遠慮しない。「(特使を)派遣する海部氏も海部氏だが、受けた松永氏も松永氏だ」と当時の首相と前任者をバッサリ。河野外相を「随分失礼な大臣もいるものだと思った」。加えて「小泉内閣の二人の女性大臣」を「いくつかの要件を全く欠いていた」。村山談話を引いた小泉首相演説に関し「担当局長は愚か者であり、臆病者だ」と断罪する。
 上下巻にわたり値が張るが、買って損はない。太鼓判を押す。

村田良平回想録 上巻−戦いに敗れし国に仕えて

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村田良平回想録 下巻−祖国の再生を次世代に託して

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海洋をめぐる世界と日本

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なぜ外務省はダメになったか―甦れ、日本外交

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