NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

坂口安吾

今日は安吾忌。(昭和30年2月17日)


安吾はぼくの生きる指針。

 青年は先ず「ひとり」であることが大切だ。さうして、自分とは何者であるか、何を欲し、何を愛し、何を憎み、何を悲しんでゐるか、それを自覚し、そして自分自身を偽らぬことです。他人が正しくないと云って憤るよりも、自分一人だけが先ず真理を行ふことの満足のうちに生存の意義を見出すべきではないですか。郵便配達夫は先ずその職域に於て最善の責務を果すことです。それもできずに、道義退廃だの政治の改革だのと騒いでも駄目です。私は結社や徒党はきらひで、さういふものゝ中でしか自分を感じ得ぬ人々は特にきらひなのです。

 青年は純潔だなどゝ申しても、人間は悲しいもので、年をとると、だめになります。情熱はだんだんあせ、正義よりも私利に傾き、せちがらくなり、ずるくなり、例の大人になります。けれども、我々が大人になると、あなた方青年が生れ、あなた方青年が大人になると、次の青年が生れてゐて、青年は常に無限です。この永遠の青年達の常に変わらぬ真善美への追求と愛は、この地上で最も信頼できるものゝ一つで、青年諸君は他をたよらず、他を指して我が身の口実となさず、先ず自分自身の身辺に於て自らの真善美を行ひ、生かすことです。社会を考へ、徒党を考へるのは、あとのことです。慷慨悲憤は多へ対してゞなく、先ず汝自らの内に向けられるべきです。

─― 『青年に愬ふ―大人はずるい―』(『学生諸君!』)




「すべて『一途』がほとばしるとき、人間は『歌う』ものである。」

─― 坂口安吾『ピエロ伝道者』


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堕落論 (新潮文庫)

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桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

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日本文化私観 (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

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教祖の文学・不良少年とキリスト (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

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