道徳に就いて
古人に曰く、「情けは人の為ならず」と。
風呂のお湯を、手で自分の方へかき寄せれば、みんな向こうの方へ流れていく。逆に向こうの方へ押してみると、こっちに流れてくる。これが世の道理である。
(これは、「自分のことだけ考えて、幸せを手に入れようとしても、かえって自分のところからは逃げていく。逆に他人のことを考えて、他人の幸せを願い行動すると、結果的に自分も幸せになることができるのである」という意味です。他者に手を差し伸べ、他者のことを第一に考えた尊徳の気持ちがよくわかります。)
── 二宮尊徳のことば(『13歳からの道徳教科書』)
昨日の産経抄より。
「【産経抄】11月13日」(産経新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/life/news/131113/edc13111303090000-n1.htm
子供のとき両親を亡くした二宮金次郎は伯父の家に預けられる。迷惑をかけてはならないと田畑で懸命に働く一方、儒教の『大学』を入手し、深夜に勉強した。ところがこれに気付いた伯父は「そんな勉強のために貴重な灯油を使うな」と禁じる。
金次郎は川岸の空き地でアブラナを育て、採れた菜種と灯油を交換してやっと夜の勉強を再開した。それでも伯父は「時間を無駄に使うな」と許さない。そこで今度は夜もむしろ織りなどをして働き、山に薪取りなどに行く往復の時間を勉強に充てたのである。
内村鑑三の『代表的日本人』などで語り継がれる二宮尊徳の逸話だ。小学校などでおなじみだった金次郎の銅像が生まれた所以(ゆえん)でもある。ところが、その金次郎像がどんどん姿を消してきている。学校でほとんど教えず、金次郎が子供たちから遠い存在となったからだろう。
文部科学省の有識者会議が道徳の「教科」への格上げと検定教科書の使用を求める報告書案を公表した。当然に思えるが、案の定「特定の価値観の押しつけだ」との批判があるらしい。文科省内部にも「教科書検定の基準を決めるのは難しい」と腰を引く声もあるという。
だが二宮尊徳をはじめ、近江聖人といわれた中江藤樹、「稲むらの火」の濱口梧陵ら、誰もが子供たちに生き方を教えたい人は多い。外国にもヘレン・ケラーやマザー・テレサがいる。そんな人物を語るだけで立派な教科書となる。検定も問題ないはずだ。
昨年、その試験版として『13歳からの道徳教科書』を編集した「道徳教育をすすめる有識者の会」の渡部昇一氏はこう話していた。「人生のある場面において、教科書に載った人物の良い行動原理が無意識に助けてくれると確信している」。
各紙社説。
反対派
「社説[道徳の教科化]価値観植え付け危うい」(沖縄タイムス)
→ http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-11-12_56460
「道徳の教科化 価値観の強制を危惧する」(新潟日報)
→ http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20131110077638.html
賛成派
「【主張】道徳の教科化 今度は逃げずに実現せよ」(産経新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/life/news/131019/edc13101903300000-n1.htm
二宮尊徳や中江藤樹、ヘレン・ケラーやマザー・テレサ、彼らの生き方を学ぶことに何の問題があるのだろうか。
『ファーブル昆虫記』や『エジソン』、偉人傑士の伝記の類に胸躍らせた幼少期が懐かしい。
道徳教育の一つの道は、私たちが「美しい」と感ずるような話を子供たちに伝えることではないかと思います。健全な少年少女にとって、美しい、ためになる話は、同時に面白いのです。教室で偉人の話をすれば、子供たちの目は必ず輝くはずです。私たちは世界中の美しい話、いい話、そして特に日本人の行った素晴らしい話を子供たちに伝えるべきでしょう。
そこから子供たちが、国を愛する、家を愛する、子孫を愛する、親を尊敬するといった基本的なことを身につけ、志を立てて、それぞれの道で志を遂げること、自分にあった成功の道があることを学んでほしいと思うのです。
── 渡部昇一(『13歳からの道徳教科書』)
『2009年03月23日(Mon) 道徳教育に就いて』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20090323『2013年10月30日(Wed) 一日一言「かしこき聖旨」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131030
『2013年10月15日(Tue) The Soul of Japan』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131015
- 作者: 道徳教育をすすめる有識者の会
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2012/02/10
- メディア: 単行本
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: 内村鑑三,稲盛和夫
- 出版社/メーカー: 講談社インターナショナル
- 発売日: 2002/10/04
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 2人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
- 作者: 金谷俊一郎
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/04/14
- メディア: 新書
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 奥本大三郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/03/15
- メディア: 単行本
- 購入: 5人 クリック: 339回
- この商品を含むブログ (6件) を見る