NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「出来ない昔には戻れない」

「『温暖化対策のため原発推進を』 著名科学者が連名で訴え」(CNN.co.jp)
 → http://www.cnn.co.jp/world/35039401.html

 気候変動を専門とする著名研究者4人が3日、地球温暖化を食い止めるため、より安全な原子力発電システムの開発を推進するよう、世界の指導者に求める公開書簡を発表した。
 連名で書簡を発表したのは、気候およびエネルギー科学者のジェームズ・ハンセン、ケン・カルディアラ、ケリー・エマヌエル、トム・ウィグリーの4氏。化石燃料を原因とする気候変動を食い止めるためには、原子力発電の利用のみが唯一の道だと主張している。
 環境問題の専門家はこれまで半世紀にわたり、原子力発電は危険過ぎると訴え、東京電力福島第一原子力発電所チェルノブイリスリーマイル島などの事故を挙げて、原発推進に反対の立場を取ってきた。
 しかしハンセン氏らは、世界のエネルギー消費が増え続ける中で、原子力を利用しなければ、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことによる二酸化炭素排出量増加の現状を覆すことはできないと主張。極地の氷床の融解や海面の上昇によって、沿岸地域が脅かされる危険があると訴える。
 その上で、「現在の原子力発電所は完璧とは程遠い」としながらも、「原子力発電に重要な役割を担わせない限り、気候安定化に向けた確実な道は存在しない」と指摘した。
 今回の書簡について、ノーベル賞受賞者でもある米スタンフォード大学の物理学者バートン・リヒター氏は、環境保護を強く訴える立場からは「裏切り」とみなされるかもしれなと指摘する。
 原子力発電は、アジアなどの一部地域では推進する動きが広がっている。ただし日本だけは、福島第一原発の放射性物質を安全に処理できる方法を模索して悪戦苦闘する状況が続く。
 一方、ドイツは福島第一原発の事故を受け、原子力発電所17施設を2022年までに段階的に閉鎖する計画を打ち出した。
 原発に反対している米有力環境保護団体、自然資源防衛協議会(NRDC)のラルフ・カバナー氏は、「原子力発電について少数の人たちが心変わりしたことが、それほど重要だとは思わない」との立場を取る。核燃料は二酸化炭素は排出しないかもしれないが、安全上の問題があまりに多く、代償もあまりに高くつくとNRDCは主張する。
 ハンセン氏は有力者に対して自身の説を説く活動を展開しており、最近ではアル・ゴア米元副大統領と会って、原子力発電技術の発展は気候変動の安定化につながる可能性があると訴えた。
 ただ、ゴア氏の意見を変えさせることはできなかったといい、「基本的には、より安全で優れた原子力発電の開発を試みるべきだという点は理解してもらえた」「しかし同氏はあえてそれを口に出すことはしなかった」(ハンセン氏)という。


原発=悪」の風潮の世の中で、感情論に左右されず、彼らの考える正義のために訴える意志の強さを称えたい。

 原水爆であらうと悪魔であらうと、生れてしまったら、もうどうにもならないのです。あと私たち人間のできることは、さらにそれをおさへる強力なものの発明あるのみです。半歩後退はできない。後退するとすれば、イエスやガンジーのやうに文明を徹底的に抛棄することしか道はないのです。
 さういふことは、もちろん原水爆禁止運動の否定を意味しません。私のいひたいのは、聖徒の支配を夢みた地上最高の理想主義者イエスは、同時に悪魔の存在を許した最高の現実主義者だつたといふことです。
 力の政治は力によつてしかおさへられません。原水爆をおさへうるのは、おそらく署名運動ではありますまい。私たちにできることは、徹底的に負けるか徹底的に勝つか、この二つのどちらかであります。それが西洋の文明の在りかただと私は信じてゐます。「カイゼルのものはカイゼルへ」といつたのイエスは、さういふ文明のアイロニーを的確に感じてゐたのです。

── 福田恆存(『戦争と平和と』)

山本夏彦翁にも曰く、「出来てしまったものは出来ない昔には戻れない。」(『「戦前」という時代』)と。
我々は過去に戻ることは出来ない。進み続けるしか、道は無いのである。


ぼくは人間の良心を信じる。人類の叡智を信じる。
我々はこれまでも様々な困難を乗り越えてきたし、これからも必ず乗り越えて行くことであらう。

あたしたちは死に絶えやしないよ、人間ってどんどんすすんでいくんだよ

ちょいと変わることがあるかもしれないけど、まっすぐどんどんいくもんだよ。

── ジョン・スタインベック『怒りの葡萄』