似非科学信仰と懐疑的思考
「『奇跡の水』『未知の菌』…被災地などに怪しい除染技術横行」(産経新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130621/dst13062120050015-n1.htm
福島県を中心に東北地方や関東地方の8県で実施されている除染をめぐり、全国各地の業者から非科学的な怪しい技術の売り込みが横行している。環境省は簡易審査を導入し、一定の信頼性を保証した除染技術を速やかに公開するポータルサイトを6月末にも設置し対抗する方針だ。
「放射能を消す超能力があるので、試させてほしい」。原発事故後、約40件の売り込みがあった福島県浪江町。全国各地の業者や自称発明家の営業が続いているという。その大半は「奇跡の砂」「未知の菌」など科学的な根拠の乏しい“新技術”だ。福島県大熊町では今年4月、「太古の微生物が生体核融合を起こし放射能が消える」という触れ込みの粉末が持ち込まれた。土壌に粉末や水溶液をまく実験に付き合ったが、案の定、効果は確認できなかった。
担当者は「善意の申し込みなのか、金もうけに利用されているのか判断できない。今後、売り込みは全て断るつもり」と話した。
水には波動があって何でも知っていたり、活性水素やアルカリイオン、高濃度酸素が溶けた水がガンを治したり、特殊な微生物が農作物を巨大化したり、、、。
動物性(油だったりタンパク質だったり)よりも植物性。科学よりも自然。という信仰。
偏狭的な菜食主義や反牛乳主義。自然医療、似非医療。無農薬、低農薬、有機栽培絶対主義。
(言わずもがな、、、正直、こういった類いの話は大好きなのだけれど)
善意を売り物にしてはならないのは当然として、無知による善意の信仰も同罪である。(最終的には信じるしかない、というのがぼくの考えではあるが。。。)
“科学の良心”カール・セーガン博士は、こういったいわゆる“トンデモ”系の似非科学に引っかからないため、以下のような懐疑的思考例を“道具”として挙げている。
『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』より抜粋。
- 『裏付けを取れ』──「事実」が出されたら、独立な裏付けを出来るだけたくさん取るようにしよう。
- 『議論のまな板に載せろ』──証拠が出されたら、様々な観点を持つ人たちに、しっかりした根拠のある議論をしてもらおう。
- 『権威主義に陥るな』──権威の言うことだからといって当てにしないこと。権威はこれまでも間違いを犯してきたし、今後も犯すかも知れない。こう言えばわかりやすいだろう。「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいるだけだ。」
- 『仮説は複数立てろ』──仮説は一つだけでなく、いくつも立ててみること。まだ説明のつかないことがあるなら、片っ端から反証していく方法を考えよう。このダーウィン主義的な選択をくぐり抜けた仮説は、単なる思いつきの仮説に比べて、正しい答えを与えてくれる見込みがずっと高いはずだ。
- 『身びいきをするな』──自分の出した仮説だからといって、あまり執着しないこと。仮説を出すことは、知識を手に入れるための一里塚にすぎない。なぜそのアイディアが好きなのかを自問してみよう。そして、ほかのアイディアと公平に比較しよう。そのアイディアを捨てるべき理由が無いか探してみよう。あなたがそれをやらなければ、他の人がやるだろう。
- 『定量化しろ』──尺度があって数値を出すことが出来れば、いくつもの仮説の中から一つを選び出すことが出来る。あいまいで定性的なものには、色々な説明が付けられる。もちろん、定性的な問題の中にも深めるべき真実はあるだろうが、真実を「つかむ」方がやりがいがある。
- 『弱点を叩き出せ』──論証が鎖のように繋がっていたら、鎖の輪の一つ一つがきちんと機能しているかどうかをチェックすること。「ほとんど」ではなく、前提も含めて「すべて」の輪がきちんと機能していなければならない。
- 『オッカムのかみそり』──これは使い手のある直感法則で、こう教えてくれている。「データを同じくらい上手く説明する仮説が二つあるなら、より単純な方の仮説を選べ」。
懐疑的思考とは、筋の通った議論を組み立てたり、それを理解したりするための手段である。わけても重要なのは、人を惑わすごまかしを見破ることだ。大切なのは、推論によって引き出された結論が気に入るかどうかではなく、その結論が、前提ないし出発点からきちんと導かれたものかどうか、そしてその前提が正しいかどうかなのである。
── カール・セーガン(『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』)
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