NAKAMOTO PERSONAL

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第26回正論大賞

櫻井よしこ氏に正論大賞 日本の誇り回復へ精力的に」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101206/plc1012061701009-n1.htm

 第26回正論大賞がジャーナリストの櫻井(さくらい)よしこ氏(65)に贈られることが決まった。フジサンケイグループがこのほど開いた正論大賞の選考委員会で、日本再生へ向けた精力的な言論活動が高く評価された。
 正論大賞はグループの基本理念である「自由と民主主義のために闘う正論路線」を発展させた学者、文化人らに贈られる年間賞。
 櫻井氏は「日本文明を誇りとする」立場からシンクタンク・国家基本問題研究所を設立、「日本人の誇りと志」を取り戻すべく提言を続けている。櫻井氏は、周辺への膨張、歴史の欺瞞を続ける中国に対して厳しい目を向け、日本が戦略的な対応をとる必要性を強調。尖閣諸島沖漁船衝突事件などをめぐる民主党政権の混迷を厳しく論評している。
 また、家族、皇室、靖国参拝など日本の伝統的な価値観を尊重し、民主党が推進しようとする外国人参政権などには明確なノーを突きつけた。こうしたぶれない姿勢と切れ味鋭い論調が正論大賞にふさわしいと評価された。櫻井氏は産経新聞「正論」執筆メンバー。
 新進気鋭の言論人を見いだして顕彰する新風賞は今年は該当者はいなかった。
 正論大賞の正賞はブロンズ彫刻「飛翔」(御正進氏制作)、副賞は賞金100万円。贈呈式は来年2月16日夕、東京・グランドプリンスホテル赤坂で行う。


「櫻井氏受賞の言葉 日本の根本課題を解く 直球表現で発信続ける」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101206/plc1012061701010-n3.htm

 足掛け15年前になる平成8年3月、16年間続けたテレビのニュースキャスターを卒業した。当時記者会見で語ったことを長い間私は忘れていたのだが、10年ほど過ぎたころ、古いVTRを見た。すると、その中で私は、「これからは論陣を張っていきたい」と語っていた。
 思わず赤面する気負った発言である。自分自身に明確な意識はなくとも、そんな気負いの中で、私は歳月を暮らしてきたのだろうか。
 書くことは、考えるというひとり作業である。現在進行形の世界の状況を横軸としてとらえ、それを、縦軸としての長い歴史の中に置きつつ近現代史の一次資料に当たる。先人たちの思想や行動が少し身近に感じられるようになるとき、横軸と縦軸の交差地点に浮かんでくる現在の日本の姿ほど、心もとないものはない。戦前戦後を通じて、日本が繰り返し犯してしまう失敗の根深い原因も、両軸の交差する地平から見えてくる。
 特に戦後の日本の営みを見詰めるとき、わが国に理念が欠落し、政策に一貫性が欠けているのは明らかだ。なぜ、これほど漂流するのか。現状への深い失望や憤りは、日本を愛すればこそである。この失望と憤りの向こうに、日本の直面する根本的な問題への解を見いだし、その実現に言論人として資することのできる自分でありたい。そう切望しつつ、私は書いてきた。書くとき、折々に母に言われた言葉が蘇(よみがえ)ってくる。

 「あなたのことを、いつも神様が見ていらっしゃる。たとえ神様が見ていらっしゃらないときでも、自分自身が見ているのだから、自分に恥じないように生きなさい」
 私も人間である。間違いも思い込みもしてきた。恥をかきながら、自分の視点を検証し、改めてきた。間違いに学ぶことが前向きの力になることも体験してきた。
 一方、不器用であるために、私の表現はおのずと直截(ちょくせつ)になる。筆を進めるとき、なぜ、ここまで激しく厳しく書くのかと反問しながらも、書かずにいられない。摩擦が生まれても止めるわけにはいかない。
 なぜなら、言論を物し、周囲と対立したとき筆を緩めるとしたら、そんな自分をもうひとりの自分が凝(じ)っと見詰め続けるに違いないからだ。その凝視の前で、筆を緩めようとするもう一方の自分を消し去りたくなるほど恥じ入るであろうから。
 だから、いまの直球表現で、これからも気負い続けるのが、一番私の性に合っているのである。
 加えて経験から、実感もしている。最も批判されるときこそが、言論人として最も鮮烈な生を生きている瞬間なのだと。こんな言葉も心に刻まれている。
 「深海に生きる魚族のように、自ら燃えなければ光はない」

 どんな状況になっても、言論人は自分の考えを発信し続けることが最善だということだ。
 この度、名誉ある正論大賞を受賞することになった。身に余る光栄の前で、私は深海の魚のように一人ではないことを実感している。それどころか、多くの人々に支えられていると感じ、心をあたためられ、深く感謝している。この重い意味のある正論大賞に励まされ、さらに論を磨き、深め、発信していきた


『正論』 http://www.sankei.co.jp/seiron/

正論 2011年 01月号 [雑誌]

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