NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

軽々しさ

産經新聞、社説より。


「【主張】出会い系サイト 軽々しさに危険がひそむ」(産經新聞
 → http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090726/trd0907260230001-n1.htm

 大阪府茨木市のマンションで19歳の女性が監禁され、救出に駆けつけた警官が容疑者に刃物で切りつけられて負傷した。容疑者は「女性とは出会い系サイトで知り合った」と供述している。
 千葉市で連れ去られた22歳の女性も沖縄県で保護された。容疑者とは一時同棲(どうせい)生活を送っていたとはいえ、この2人が知り合ったのもやはり出会い系サイトだったといわれる。
 出会い系サイトがきっかけとなって起きた淫行(いんこう)、殺人などの凶悪犯罪は多数に上り、サイトの数についても実態は把握されていない。この種のサイトを利用する際には、常に危険性がつきまとっていることを承知し、慎重の上にも慎重を期したいものである。
 それにしても昨今は、人と人の出会いがあまりにも軽々しいものになってしまったことに慨嘆を禁じ得ない。「会う」とはもちろん、人と人とが対面することだが、王朝時代には「男は女にあふ事をす…」(竹取物語)と示されるように、「男女が関係を結ぶ」「結婚する」の意もそなえていた。単に男女が対面するだけでなく、互いの愛を確かめ合うという実に重大な人間関係の上に成り立つ言葉だったのである。
 情報伝達手段が発達し多様化した現代では、電話やネットによって人は互いに匿名で、生身の顔を見せ合うことなく、“仮面”をかぶったままでも「会う」ことが可能となった。初めて生身で会ったときには既に、相手を観察する用心深さも消えているから、まるで顔見知りであるかのような気安さを覚えたとしても、特に不思議な話ではなかろう。かつて流行したテレホンクラブも、そんな土壌に生えた毒草だった。
 情報技術(IT)は健全に使われてこその利器であることを考えれば、私たち現代人にいま最も求められているのは真の情報リテラシー(活用能力)であることが分かる。それともう一点強調しておきたいのは、出会い系サイトに絡んだ犯罪では、当事者の善悪はともかくとして、体格・体力で不利になりがちな女性が被害者となるケースが圧倒的に多いという事実である。女性にはとくに自衛の心構えをもってもらいたい。
 男女が「会う」のは「会いに会う(いちずの思いで会う)」ことが要諦(ようてい)である。けっして興味本位のものではないことを、最後に再確認しておきたい。