100歳展
「【産経抄】5月4日」より
→ http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090504/acd0905040210000-n1.htm
童謡「ぞうさん」で知られる詩人のまど・みちおさんが、11月で100歳になる。それを記念した「100歳展」が、連休最終日まで東京・銀座で開かれている。展示作品のひとつに驚いた。
▼悪事を重ねて大金を手にしたドロボーが、子分のすりに金を盗まれたり、大親分になぐられたりして、詩はこう結ばれる。「お凸のタンコブ なでながらに ねんぶつ ブーブーで! 笑われたとさ 子豚のブウに な…」。まるで、米国発の金融危機に続いて、新型インフルエンザに右往左往する世界を皮肉っているようではないか。
▼もっとも「な」と題されたこの作品ができたのは、昨秋だからあり得ない。だいたい、「100年に1度の危機」なんていわれても、まどさんにはぴんと来ないかもしれない。自身の一番の危機といえる軍隊時代にも、「ことば遊び」をやめなかった。
▼戦友の近藤和一という人に最初に会ったとき、帽子に縫いつけられた名前を「チイズカウドンコ」(チーズかウドン粉)と反対に読んだ。おまけに戦友の仕事がコックだったと聞いて、うれしくなる。何年もあとになって、それを「カバのウドンコ」という詩にしてしまう人なのだ。
▼平成6年、児童文学のノーベル賞といわれるアンデルセン賞を受賞したとき、スピーチのなかである幼稚園での出来事に触れた。トイレに行きたいのに、紙がないと泣いて足踏みする子がいた。友達が紙を差し出して、早く行くようせき立てながら、やはり泣いて足踏みしている。
▼「他人の痛みを自分の痛みと感じられるのは子供だけ」とまどさんはいう。「そんな子供のために、一編の詩を書きたい」とも。明日のこどもの日にも、まどさんは原稿用紙に向かっているのだろうか。
『ぞうさんの詩人・まどさん100歳展』(本の教文館) http://www.kyobunkwan.co.jp/Narunia/event2009nennnaruniakoku10shuunennkinennkikaku.htm
『まど・みちお - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BE%E3%81%A9%E3%83%BB%E3%81%BF%E3%81%A1%E3%81%8A
- 作者: まどみちお,伊藤英治
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