「大学の生徒」と「保護者」
腹蔵、忌憚のない、呉智英さんのコラムが良い。
「【断 呉智英】保護者やら生徒やら」(産経新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/life/education/071113/edc0711130358004-n1.htm
先日とあるホテルのロビーのパーティー案内板を見て仰天した。某大学の「保護者総会」という文字があったからだ。保護者って何だよ、保護者って。小学生や中学生や高校生じゃないんだぞ。
現役入学者なら大学生は二年次に成人になる。単純計算で大学生全体の六割以上が成人だ。実際には浪人経験者がいるから、七、八割は成人である。成人にどうして保護者が必要なのか。
一九六八−六九年の東大闘争の時、学生の母親たちが慰撫(いぶ)か懐柔のつもりだろうかキャラメルを配って歩き「キャラメル・ママ」と揶揄(やゆ)嘲笑(ちょうしょう)された。もちろん、マスコミにも警備当局にも全共闘の学生たちにもだ。その全共闘世代も還暦を迎える。「学生の保護者」はその一回りは下の世代だから、そんな記憶もないのだろう。こりゃ、そのうち大学にモンスター・ペアレンツも現れるぞ。
実は、私自身いくつかの大学で講師を務めているので、十年ぐらい前からおかしな変化に気づいていた。学生が自分たちのことを「生徒」と言うのだ。お前たちはいつから生徒に逆戻りしたんだ、などと怒っていた。中学生・高校生が「生徒」、大学生が「学生」。英語でも「生徒」pupilと「学生」studentはちゃんと区別している。こんなことは中学の英語でも習うことだ。
ところが、私が講師控室にいると、教務部の職員までが「生徒さんが先生にお会いしたいそうです」などと言って来る。「生徒には会わん、学生には会う」と言ってもきょとんとしている。
孔子は「必ずや名を正さんか」と言っている。名(ものごとの名称・言葉)が正しくないと、思考も文化も社会も衰微してしまうからである。至言である。「大学の生徒」にはそんなこと言っても分からないかな。(評論家)
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