“昭和の参謀”
後に“瀬島機関”とまで言われる“昭和の参謀”、瀬島龍三さんが亡くなりました。
激動の昭和の記憶がまた大きく遠退いた。
【産経抄】より
今年の夏は、ことのほか暑かった。そのせいも多少あったのかもしれない。宮沢喜一元首相、共産党の宮本顕治元委員長の後を追うかのように、瀬島龍三氏がきのう、この世を去った。3人の立場は、際だって違うが戦中戦後に主役を張った人々が次々と退場し、秋風とともに「昭和」ははるか彼方に過ぎ去った。
▼中でも瀬島氏は回想録「幾山河」(扶桑社)で「5つの人生」を歩んだと振り返るように、その人生行路は、波瀾(はらん)万丈との表現が陳腐に感じられる。陸軍大学校を首席で卒業し、大本営参謀も務めたエリートが敗戦で挫折した。
▼東京裁判にソ連側証人として出廷し、11年もソ連に抑留された。帰国後は、40代半ばで「4等社員」として入社した伊藤忠商事では会長まで上り詰めた。中曽根康弘元首相の懐刀となって国鉄、電電公社の民営化を成功させるのは、70代になってからである。
▼訃報(ふほう)に接して中曽根元首相は「安倍晋三首相のまわりには瀬島さんのような人が見当たらない」と嘆いた。確かにその通りだ。目端の利くお役人たちは、「この政権は長く持つまい」と、面従腹背ぶりを遺憾なく発揮している。あれほど世間の指弾を受けた社会保険庁の改革も遅々として進んでいない。
▼足元を見る、とはまさにこのことだ。101を数える独立行政法人の廃止・民営化に積極的な姿勢をみせた中央省庁もゼロだという。「改革」の重しがとれようとしている官僚たちは大喜びだ。
▼生前、瀬島氏は「戦略なき国家は滅びる」と口癖のように語っていた。「政治とカネ」の問題はむろん重要だ。だが、1円、2円の領収書で政治家がびくびくし、国政の場で国家戦略の論議が二の次になるようでは、この国は滅びてしまう。
「瀬島龍三氏が死去、元大本営参謀・伊藤忠会長など歴任 」(日経新聞)
→ http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070904AT1G0400T04092007.html
「『功績忘れられない』 瀬島氏死去で中曽根元首相」(産経新聞)
→ http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070904/skk070904005.htm
「元伊藤忠会長の瀬島龍三氏死去…元大本営参謀、臨調委員も」(読売新聞)
→ http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070904i102.htm?from=main1
『瀬島龍三 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%80%AC%E5%B3%B6%E9%BE%8D%E4%B8%89
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国の将来を背負っていかれる若い方々に、次のことをお願いしたいと思います。
一つは、繰り返しになりますが、本分を守ってもらいたい。学生には学生としての本分がありますし、会社員には会社員としての本分がありますし、公務員には公務員としての本分があります。
本分を守るということのなかには、務めを守るということもありますが、その務めに伴う道徳を守るということも含まれているのですね。その意味で、本分をきちっと守り、かつ努力をしていただきたい。これが一つですね。
それからもう一つは、将来にビジョンを持って、それに対して全力を傾けて努力してもらいたいということです。
─― 瀬島龍三(『日本の証言』)