NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

『産経抄』

首相を引きずり下ろそうとする野党、それを煽るメディア、そしてそれに同調する国民に対する、“産経抄”の反論。



今日の『産経抄』より。
 → http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/sankeisho/070731/sks070731000.htm

 囲碁や将棋の世界には、「勝ち」と「負け」しかない。ところが、トップに近くなればなるほど、「美学」というもうひとつの価値観を大事にする人が出てくる。たとえば、圧倒的に形勢が悪くなっても、相手のミスを期待して負けを認めないのは「美学に反する」というのだ。

 ▼安倍晋三首相はひと一倍、美学にこだわる政治家に違いない。なにしろ、自らの政権公約ともいえる著作に『美しい国へ』という題を付けるくらいだ。それなのに、政権発足してからの10カ月間を振り返ってみてどうだろう。

 ▼任命した閣僚の不祥事はとどまるところを知らなかった。極めつきは、赤城徳彦農水相のへらへらした弁明と絆創膏(ばんそうこう)姿だった。それをかばい続ける首相の姿は、お世辞にも美しいとはいえない。清新なイメージへの好感度が高かっただけに、失望も大きかった。参院選大敗のもっとも大きな要因といえる。

 ▼にもかかわらず首相は、早々に「続投」を宣言した。きのうの記者会見では、しきりに「反省」を口にしていたが、野党が攻勢を緩めるはずもなく、与党内からも、足を引っ張る動きが出てくる。潔く引いた方がかえって再起の道が開かれる、との助言もあったろう。

 ▼あえて苦難の道、いいかえれば、かっこわるい生き方を選んだところに、首相なりの美学をみる。哲学者の鷲田小彌太さんがいうように「泥まみれの美だって存在する。いな美はつねにとはいわないが、『泥まみれ』とともにあるのだ」(『人生の哲学』海竜社)。

 ▼国民の多くは、首相を目の敵にする一部メディアに同調して、引きずり降ろして拍手喝采(かっさい)したいのだろうか。そうは思わない。逆境の泥にまみれながら、奮闘する姿が美しいのか、見極めたいのだ。