NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

考える人

哲学者、池田晶子さんが亡くなった。


当たり前の事を当たり前に。
本当の事を本当に語りづつけた、哲学の巫女。


『産経抄』より。
 → http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/sankeisho/070306/sks070306000.htm

 携帯電話を持たない。インターネットもメールもやらない。テレビで見るのはニュースか天気予報ぐらい。池田晶子さんは、終日家に閉じこもり、思索にふける。慶応大学哲学科を出て、20代半ばで文筆生活に入った。

 ▼近著『14歳の君へ』(毎日新聞社)の巻頭で、子供たちに向かって、こんな問いかけをしている。「いじめる方と、いじめられる方と、どっちが悪いだろう」。答えはわかりきっている。

 ▼でも、いじめられるのがいやだから、いじめる側に回った子もいるだろう。大人の社会にもそんな人は多い。そこで池田さんはさらに本質的な問いを繰り出す。「生きてゆくためなら、悪いことをしてでも、生きてゆければいいのか」。

 ▼哲学という言葉からは、ソクラテスプラトンヘーゲルら知の巨人たちの名前と難解の2文字が思い浮かぶ。明治の思想家、西周が哲学と訳した英語のフィロソフィーの語源は、「知を愛する」というギリシャ語だ。

 ▼池田さんは、その原点に立ち返り、生きるとは、死ぬとは、どういうことか、根源的な問題を平易な言葉で語り伝えてきた。「哲学エッセー」と呼ばれる著作の数々は、幅広い読者の支持を得ている。今月に入っても、対談集が出たばかり。週刊誌2誌の連載もつい最近まで続いていたから、先週届いた訃報(ふほう)には驚いた。しかも46歳の若さである。

 ▼腎臓がんという、自身の病気について触れることはなかったが、「死ぬのを怖いと思ったことがない」と公言してきた。池田さんに限っては、本心だった気がする。善く生きることを忘れた日本人の目を覚まさせるために、天から舞い降りた巫女(みこ)が使命を終えた。本の扉の美しい肖像写真を見ていると、そんなふうに思えてならないのだ。


池田晶子Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E6%99%B6%E5%AD%90

14歳の君へ―どう考えどう生きるか

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人生のほんとう

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残酷人生論

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 自ら考えて討死しなさい。病いと心中してみせなさい。それだけの覚悟がないのなら、ぐずぐず悩まず、つべこべ言わず、哲学など徹底的に無視しましょう。無視して力強く潔く生きてゆきましょう。きれい好きが昂じて、「考える」という無用の用を、それのみ取り分けてこの世のくさぐさから別にしておきたかった私の仕事、煎じ詰めれば、たったのこれだけ。これで、おしまい。
 あとは各自で宜しくやって下さい。

─― 池田晶子『考える人―口伝(オラクル)西洋哲学史』