中国からの贈り物(3)
産経新聞、今日の『産経抄』より。
→ http://www.sankei.co.jp/news/061106/col000.htm
「親とは仲良くないから、弱いところを知られたくない」。土曜日の夜、いじめを特集したNHKの視聴者参加番組に、被害に遭っている子供から寄せられたメールには驚いた。もちろん、親が苦しむ姿を見たくないという理由で、打ち明けられない子もいる。
▼こんな例もあった。教師が両方の親子を面談する機会を作ったところ、いじめている子の親が、教師の制止を振り切って、いじめられている子をなじりはじめたという。昨今のいじめ問題では、学校の対応ばかりが注目されがちだが、最終的に子供を守れるのは親だけだ。
▼そのために親ができることは何か。答えのひとつは、3日にフジテレビ系で放映されたドキュメンタリー『泣きながら生きて』にあると思った。主人公の丁尚彪さんは、35歳の時、妻と小学4年の娘を上海に残して来日したものの、大学進学の夢は破れ、不法滞在者として働き続けてきた。
▼食事はすべて自炊、入浴は湯沸かし器の湯をビニール袋にためて、とぎりぎりの節約生活が続く。娘の希望する海外留学を実現するためだ。米国の大学に合格した娘とは8年後、妻とは13年後に、飛行機の乗り継ぎ時間を利用して短い再会を果たしただけだった。
▼離れて暮らしていても、娘は父親の献身的な愛情を常に感じながら、勉強に励んだに違いない。かつて野口英世が、米国で寝る間を惜しんで研究に没頭しながらも、赤貧のなかで医学への道を切り開いてくれた母のことを片時も忘れなかったように。
▼「これからの行動で、親に恩返しするしかありません」。見事産婦人科医となった娘の言葉もいい。親と子の絆(きずな)を取り戻すためにも、家庭教育の大切さを明記した教育基本法改正案の成立が急がれる。