NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

『イリュージョン』

休みだったので久しぶりに街へ。

紀伊國屋で書籍1冊を購入。


リチャード・バック『イリュージョン』(悩める救世主の不思議な体験)
新訳で再版されました!


既に絶版となって久しい村上龍訳版の『イリュージョン』(退屈している救世主の冒険)は、ぼくの人生の方向を決定づけた座右の書。
カナダでの貧困生活の中、むさぼるように何度も何度も繰り返し読みました。


近頃、人生だらけているので、ちょいとここらで、たるんだ糸を引き締める。


ぼくは宿命論者ではないが、本との出会い、人との出会いには必然性を感じる。
類は友を呼ぶの法則である。出会うべくして、出会うのである。


故に、“偶然は必然”なのである。

 彼は群衆に言った。「どんな犠牲をはらっても、とにかく苦しみに満ちた世界を救いたいと神に語りかけると、それに答えて、神は人がなすべきことを教えてくださいました。そのとおりにすべきでしょうか?」


 「もちろん、救世主さま!」と、おおぜいの人々が叫んだ。「まさに地獄の苦しみを喜んで味わうべきです。神はきっとそれをもとめておられるのでしょう!」


 「それがどんなに苦しいものであっても? その仕事がどんなにたいへんなものであっても?」


 「首を吊られるのは、名誉なことですし、磔にされ、火あぶりにされるのは光栄なことです。もしそれが神の思し召しであれば」彼らはそう言った。


 「あなたたちなら、どうします」と、救世主は群衆に言った。「『この世に生きているかぎり、幸せでいるように』神から面と向かって直接そう言われたら、そのときはどうしますか?」


 群衆は静まりかえり、彼らがいる山腹や谷間には、声ひとつ、物音ひとつ聞こえなかった。

─― リチャード・バック『イリュージョン』イントロダクションより


佐宗鈴夫版
イリュージョン 悩める救世主の不思議な体験

イリュージョン 悩める救世主の不思議な体験

村上龍
イリュージョン (集英社文庫 ハ 3-1)

イリュージョン (集英社文庫 ハ 3-1)



 「人間が学校というフェンスから出ると、そこは、ドラゴンワールド(現実の、悪意に充ちた世界)なわけだ。地球上には三十億だか、四十億だかの人間がいて、おまえはその三十億プラス一の余り者にすぎない、おまえのことなんか誰も関心を持っていやしない、生きていようと死のうと、こっちの知ったことか、みたいな扱いをうけることになる。ある人間がだめになるというのは、そういうことなんだよ。
 どうやってそれに対抗するかといったら、やっぱり自分の歌をうたい続けることだと思うね。『うるせえ、おまえのその変な歌をやめねえと張り倒すぞ』かなんか言われて、それでだめになっちゃうことだってあるけど、張り倒されても、まだ歌い続けることだ。
 もちろん、ドラゴンワールドにあっては、明日の飯代をどうしよう、今日の部屋代をどうしようなんていうわずらいもある。それはしょうがないから、思いわずらい、駆けずり回りながらでも、自分の歌だけはうたい続けるわけだ。」

─― リチャード・バック