NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「宇宙人による誘拐」説

「宇宙人による拉致体験、寝ぼけたときの“金縛り”が原因=米ハーバード大研究員」(AP/livedoorニュース)
 → http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1496941/detail?rd

 この本の中で、クランシ−さんは、宇宙人に拉致されたと主張する人たちが、「誤った記憶」を「空想癖や記憶の歪曲、文化的な背景、睡眠時の幻覚、科学に対する無知」などから作り出してしまったと論じている。しかし、クランシ−さんは、拉致体験者が狂っていると主張しているわけではなく、むしろ、調査を行ったほとんどの体験者が、全く正常で、知的だったことに驚いたと述べている。

  そして、クランシ−さんが拉致体験者の多くが、睡眠時に目が覚めて動くことができない“金縛り”(睡眠麻痺)の状態を経験していることに着目した。これは目覚めているときと眠っているときの間の状態で、ときに幻覚を見ることもあり、クランシ−さんはこの金縛りが宇宙人による拉致の実態だと主張している。

しかし、本を出版した現在、クランシ−さんのところには、宇宙人を信じる人たちから嫌がらせの手紙が殺到しており、クランシーさんは「もう宇宙人の研究はしない」と固く誓っているとか。


これは何年も前から言われていることだ。
『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』(1997年刊行)より。

 「宇宙人による誘拐」が、睡眠中、起き抜け、あるいは長距離ドライブ中に起こりやすいというのは示唆的である。長時間ぶっ続けに運転していると、自己催眠的な白昼夢を見る危険性が高くなることはよく知られている。「誘拐」専門のセラピストが首をかしげるのは、患者が恐怖のあまり叫んだのに、その横で配偶者がぐっすり眠り込んでいたと聞かされる時だ。「助けて」と呼ぶ声が、誰にも届かない――夢にはよくあるシーンだ。「誘拐」の話は、睡眠と関係があるのかもしれない。

 「宇宙人による誘拐」とよく似た心理状態をもたらすものに、「金縛り(睡眠麻痺)」がある。金縛りを経験したことのある人は多いだろう。これが起こるのは、完全に目覚めている状態と完全に眠っている状態の中間にある時で、数分間にわたって動けなり、強い不安に襲われる。胸の上に何かが乗っているような感覚にとらわれ、心臓は高鳴り、息が苦しくなる。そして、人や悪霊、幽霊、動物、鳥などの幻覚や幻聴が現れることもある。


そして、懐疑精神。さまざまな疑問が湧き起こる。

 それにしても、物理学や工学の分野ではあんなに進んでいる宇宙人が(なにしろ広大な宇宙空間を行き来し、まるで幽霊のように壁をすり抜けられるというのだ)、いったいどうして生物学の分野ではこんなにも遅れているのだろうか。秘密裏にことを進めようとしているのなら、なぜ誘拐した者の記憶をきれいに消しておかないのだろう。それとも記憶の抹消は、彼らにとっても難しいことなのだろうか。どうして彼らの検査器具はあんなに大きくて、しかもそこらの病院で見かける器具とやけに似ているのだろう。どうして性交などという面倒なことを何度もやるのだろうか卵子と精子の細胞をちょっと失敬して、遺伝コードを解析し、好みにあう遺伝子を好きなだけコピーすれば良いではないか。まだ宇宙を高速で飛び回ったり壁をすり抜けたりなど出来ない地球人だって、細胞のクローンぐらいなら作れるのだ。人間の遺伝子(活動している遺伝子)の九十九・六パーセントはチンパンジーと共通だというのに、人間だけが「宇宙人の繁殖計画で生まれた」などという発想はどこから出てくるのだろうか? 人間とチンパンジーの関係は、ラットとマウスの関係よりも近いのだ。

http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20051101
http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20040903
http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20040817


 信じやすい人というのは、奇妙なことがらを信じることに無上の喜びを見出すものだ。しかも、奇妙であればあるほど受け入れやすいときている。ところがそういう人は、平明でいかにもありそうなことがらは重んじようとしない。というのもそんなものは誰でも信じることが出来るからだ。

─― サミュエル・バトラー『人さまざま』


カール・セーガン 科学と悪霊を語る

カール・セーガン 科学と悪霊を語る


記憶は嘘をつく

記憶は嘘をつく


奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)