NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

父爲子隱、子爲父隱

「『解雇厳しすぎる』抗議殺到 東武鉄道の子連れ乗務 」(産経新聞)
 → http://www.sankei.co.jp/news/051111/sha060.htm

 東武鉄道の三十代の運転士が、三歳の長男を運転室に入れて運転し同社が懲戒解雇を決めた問題で、「処分が厳しすぎる」とする市民の抗議が同社に五百件近く殺到していることが十一日、わかった。

 同社は「身内で子供がやったことで、同情論が多い。しかし、安全運行が使命の鉄道会社で、第三者を運転室に入れることは、危険を誘発しかねない規則違反」として、懲戒解雇の方針は崩していない。運転士は現在、自宅謹慎中という。

 東武鉄道によると、同社への抗議は四百八十四件。内訳は電話が二百五件、電子メールが二百七十九件。「処分は理解できるが、解雇は厳しい」「成長した子供が自分のせいで親が失職したと知ればショックを受ける」などといった内容。

 運転士は妻と長男、長女の三人と一日午前、勤務終了後に一緒に出かけようと、運転士が運転する電車の先頭車両に乗車。長男がドアをたたくため、運転士はしかったが、長男は運転室に約四分間、座り込んでしまったという。

「運転室に息子入れクビ…『厳しい』と抗議430件」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20051111i501.htm



殺伐とした世の中にも、こういった抗議があることが救われる。
思ったより人々の心は温かい。


「重大な規則違反で解雇の方針は変えない」と、抗議によって処分を覆すことはないそうだが、子供のために解雇されるのなら父も本望ではなかろうか。
また子供もいつの日かそんな父を誇りに思うことであろう。


東武鉄道には、単に切り捨てるのではなく、心中しろとまでは言わないが、守ってやるだけの度量が欲しい。

四角四面でない大岡裁きを期待する。



論語の中に、ぼくの好きな一節がある。

 葉公(しょうこう)、孔子に語(つ)げていわく、わが党に躬(み)を直(なお)くする者あり、その父(ちち)羊(ひつじ)を攘(ぬす)みて子(こ)これを証(しょう)せり。孔子いわく、わが党の直きものはこれに異なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きことその中に在り。

葉公が孔子に、「わしの方にこういう正直者がある。父が羊を着服したのを子が証明した。」と誇りがに話した。すると孔子が申すよう、「私どもの正直者は少々違います。父は子のためにその罪を隠し、子は父のためにその罪を隠すのでありまして、そこにおのずから人情の正しさがあるのでござります。」

─― 子路第十三『論語』(穂積重遠訳)