NAKAMOTO PERSONAL

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「朝日・毎日vs産経・読売」

新聞四紙の教科書検定に対する主張。
扶桑社版をどう評価するかによって各紙の主張が異なり、「朝日・毎日」-「産経・読売」という図式がはっきりと現れている。


教科書検定

  • 「産経新聞」

 改善点は、北朝鮮による日本人拉致事件が記述に濃淡はあるものの歴史と公民の全教科書に登場したことだ。前回は、扶桑社一社しか拉致事件を記述していなかった。その後、平成十四年九月の日朝首脳会談で金正日総書記が拉致について謝罪した。日本人の生命が危険にさらされ、日本の主権が侵害された事件を教科書が取り上げるのは当然で、遅すぎたくらいだ。

 十年前の検定で一斉に登場した「従軍慰安婦」という言葉も今回はなくなり、慰安婦に関する記述も控えめになった。「従軍慰安婦」は戦後の造語で、日本の官憲による「強制連行」説も否定された。慰安婦問題は、戦場における性の問題である。将来は、中学校の教科書にあえて書く必要はなくなるのではないか。

 南京事件の犠牲者数も、「二十万」「三十万」という誇大な数字を記述する教科書は一社だけになった。特定の歴史的事象に限れば、教科書の記述は少しずつ良くなっている。

 しかし、時代をさかのぼると、元と高麗の連合軍が日本を襲った元寇(十三世紀)を「遠征」と書き、豊臣秀吉朝鮮出兵(十六世紀)を「侵略」としている教科書が多い。現代史でも、日本が中国や朝鮮半島で行ったことを「侵略」としながら、旧ソ連の中立条約を破った満州侵攻を「進出」とするなど、記述のアンバランスが目立つ。日本の過去だけを暗く、意地悪く描こうとする自虐史観が残っている証左であろう。

 公民教科書でも、定住外国人の地方参政権が制限されていることを、多くの教科書が差別問題ととらえ、参政権を与えるべきだとする書き方をしている。賛否両論の新聞社説を比較し、生徒に考えさせようとしている教科書は扶桑社だけだ。

  • 「読売新聞」

 2001年度までは、当時の全7社の歴史教科書に、慰安婦に関する記述があった。2002年度使用の教科書から、4社がとりやめ、新たに参入した扶桑社の教科書でも扱われなかった。
 歴史教科書に従軍慰安婦についての記述が登場した背景には、慰安婦はすべて強制連行によるものという誤った歴史認識が内外に広まったことがあった。
 日本の一部勢力が、戦時の「女子挺身(ていしん)隊」という勤労動員制度について、「慰安婦狩り」だったかのように、喧伝(けんでん)したためである。
 その誤りが明らかになった以上、慰安婦に関する記述が教科書から削除されるのは、当然のことだろう。
 竹島の領有権問題については、扶桑社など3社の公民教科書と、1社の地理の教科書に記述がある。
 扶桑社の教科書には、新たに竹島の写真も掲載された。その写真説明は、申請本では「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している竹島」とされていたが、検定の結果、「韓国が不法占拠している竹島」と改められた。
 教科書に領土問題を記述する場合、日本政府の見解を反映させるのは当たり前のことだ。

  • 「朝日新聞」

 「つくる会」の教科書が初めて登場したのは4年前の検定だった。今回は2度目の検定にあたる。
 歴史教科書では、日本武尊(やまとたけるのみこと)の神話に2ページを割いていたが、今回はなくなった。特攻隊員の遺書も消えた。全文を載せていた教育勅語も一部の要約になった。
 しかし、天皇の重視は変わらない。実在するかどうかわからない神武天皇の東征が1ページも書かれている。
 何よりも問題なのは、光と影のある近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が貫かれていることだ。
 今回、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍としてむかえたインドネシアの人々」という囲み記事が新たに登場した。日本が占領した地域の代表者らを集めた「大東亜会議」もくわしく説明している。
 一方で、中国への侵略、朝鮮半島の植民地支配については後ろ向きだ。沖縄戦についても、ひめゆり部隊や集団自決などの悲劇には一言も触れていない。

  • 「毎日新聞」

 扶桑社版で問題になったのは、近現代史における日本の行動を正当化する記述が目立つ一方、植民地支配での加害行為や負の側面には、ほとんど触れていない点などだ。例えば「朝鮮半島では日本式の姓名を名乗ることを認める創氏改名が行われ、朝鮮人を日本人化する政策が進められていた……」とあるのに対し、検定意見は「戦時下の植民地の実態などについて誤解するおそれのある表現」と指摘した。執筆者側は、「日本式の姓名を名乗らせる創氏改名」としたほか、「現地の人々にさまざまな犠牲や苦しみをしいることになった」との表現を加えた。

 全体を通して独善的な記述は減ったが、「反自虐史観」の基本姿勢は今回も貫かれており、なお不信を抱く向きもあるだろう。

竹島問題

  • 「朝日新聞」

 竹島について、「つくる会」の公民教科書は当初、「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している」と書いていた。それが検定の結果、「韓国が不法占拠している」に修正された。
 政府見解の通りにしなければ合格しないからだが、検定でそこまで求める必要があるのだろうか。これでは、国定教科書と差がなくなる。
 「検閲」ではなく、事実や通説との違いを直す役割に徹する。検定は、本来そうしたものであるべきだ。
 重要なのは、どの教科書で学ぶかである。保護者や教師も目を凝らし、国際社会を生きる子どもにふさわしい教科書をそれぞれの地域で選んでほしい。

  • 「毎日新聞」

 渦中の竹島について、「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している」(扶桑社)との説明に、「領有権について誤解するおそれのある表現」との意見が付き、「わが国固有の領土であるが、韓国が不法占拠している」との記述に改められた。また自衛隊のイラク派遣についても「戦後初めて戦地であるイラクに」(日本書籍新社)は、「イラクの中の『非戦闘地域』に」になった。

 意見自体は間違っていない。だがこんな例が続くと、教科書には政府の考え方がすべて反映されており、国定と事実上変わらないとの受け止め方をされてしまいかねない。過去の検定が、社会情勢に翻弄(ほんろう)され、時に恣意(しい)的で、不透明なものに流れたことも事実だ。

  • 「読売新聞」

 教科書に領土問題を記述する場合、日本政府の見解を反映させるのは当たり前のことだ。
 検定結果について、中韓両国政府は、反発の動きを見せている。特に韓国政府の場合は、対策チームを設けて、日韓の市民団体の連携による「つくる会」教科書の「採択阻止運動」を支援していく方針だという。
 これは、明らかな内政干渉だ。
 4年前に行われた前回の検定後、「つくる会」の教科書の採択を検討している地域の教育委員会関係者の自宅などに、不採択を求める組織的な電話がかけられるなどの圧力がかかった。
 3年前には、文部科学省教科用図書検定調査審議会が「静ひつな採択環境」を求める答申を行っている。当時、愛媛県では、「つくる会」の教科書を県立の中高一貫校で採択する際、反対グループが「人間の鎖」で県庁を取り囲むなどの混乱も起きた。
 教科書制度は国家主権に属する問題である。これを揺るがすような外国の圧力は決して許されない。

「朝日新聞」 http://www.asahi.com/paper/editorial20050406.html
「毎日新聞」 http://www.mainichi-msn.co.jp/column/shasetsu/news/20050406k0000m070147000c.html
「産経新聞」 http://www.sankei.co.jp/news/050406/morning/editoria.htm
「読売新聞」 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20050405ig90.htm




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