NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「安らかで強い“真実”」

曽野綾子さんの『透明な歳月の光 148』より。

(『「西武事件」安らかで強い“真実”』) → http://www.nippon-foundation.or.jp/org/moyo/2005634/20056341.html

 すべての人間は、悪人の要素と善人の要素を併せ持つ。小ずるいことをしたい気分になる日もあろうし、自然に善行をさせてもらう巡り合わせもある。こんなことはもう今までどれだけ聞いたり読んだりしてきたことかしれない。それを忘れるのが、人間の共通の愚かさなのである。

 事件を納めるのは、多くの真実が明るみに出ることだ。自殺するくらいなら、真実を語ればいい、と私は思うのだが、それが組織というものの怖さを自覚していない者の言うことだと叱(しか)られるだろう。
 しかし何と言われようとも、真実とは実に安らかでいいのである。真実は強い。卑近な言葉で言えば、気楽で怖いものがない。ただ真実を語るには、自分をも含めた人間そのものに対する強烈な認識が要る。真実は、神と人とに嘉(よみ)せられる、という素朴な実感が私からぬけない。