NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

SEALDs

 他人が正しくないと云って憤るよりも、自分一人だけが先づ真理を行ふことの満足のうちに生存の意義を見出すべきではないですか。郵便配達夫は先づその職域に於て最善の責務を果すことです。それもできずに、道義退廃だの政治の改革だのと騒いでも駄目です。私は結社や徒党はきらひで、さういふものゝ中でしか自分を感じ得ぬ人々は特にきらひなのです。

── 坂口安吾『青年に愬ふ―大人はずるい―』


学生の本分は何か?
学生諸君は先ずその学業に於いて最善の責務を果たすことです。
道義退廃だの政治の改革だのと騒いでも駄目です。
私は結社や徒党はきらひで、さういふものゝ中でしか自分を感じ得ぬ人々は特にきらひなのです。


他人が正しくないと云って憤るよりも、自分一人だけが先づ真理を行ふことの満足のうちに生存の意義を見出すべきではないですか?


「SEALDsのみなさん、僭越ながら『苦言』を少し」(BLOGOS)
 → http://blogos.com/article/132765/

まずは下記のスピーチ文をご覧いただきたい。

今日はどうしても言いたいことがあって、この場でスピーチさせていただきます。「戦争法案」は絶対に廃案にしなければなりません。こんな政権に日本を任せるわけには行きません。(中略)

僕は周りに政治のおかしさを訴えていきます。戦争を起こして何になりますか。誰が得をしますか。僕ら国民には犠牲しかもたらしません。

そんなに中国が戦争を仕掛けてくるというのであれば、そんなに韓国と外交がうまくいかないのであれば、アジアの玄関口に住む僕が、韓国人や中国人と話して、遊んで、酒を飲み交わし、もっともっと仲良くなってやります。

僕自身が抑止力になってやります。抑止力に武力なんて必要ない。絆が抑止力なんだって証明してやります。

何とも威勢の良いスピーチの主は、福岡県の大学に通う22歳の男子学生、後藤宏基さんである。8月28日、学生団体「SEALDs」が主催する毎週金曜日恒例の安保法案反対デモに参加し、聴衆を前にマイクで高らかに訴えた。

どこかの左派メディアのように彼らの活動を諸手を挙げて持ち上げるつもりはないが、自分たちの信念を持って活動を続ける彼らの行動力には脱帽する。

とはいえ、彼のスピーチの中身にはいささか首をかしげたくなる部分もあるので、僭越ながら少しだけ苦言を呈したい。

そもそも「戦争法案」などというレッテルを貼り、一方的に批判するのはいかがなものか。安保法案は、他国との戦争を目的にしているわけではない。首相も断言した通り、わが国が他国と「二度と戦争をしない」ための法案である。「徴兵制の復活」などというデマや誤解まで広がっているが、彼らの主張の多くは偏見に満ちている。

それともう一つ、「絆が抑止力」という言葉。中国や韓国といった隣国と交流を深めて、対話による緊張関係の平和的解消を目指すという志は立派だが、自国の利益を最優先に考える外交の世界で、そういう綺麗事だけが罷り通ると本気で思っているのか。ましてや、言葉も文化も価値観もすべて異なり、公然と敵意をむき出しにする相手であっても、気安く対話できる関係を築ける自信がそんなにおありなら、ぜひ今すぐにでもわが国の外交官としてその手腕を発揮してほしい。

これは乱暴な比喩かもしれないが、もし強盗犯が自宅に押し入り、自分の財産を奪い、家人を傷つけるような場面に出くわしても、犯人に自首を促すような冷静な対応が取れる人なんているのだろうか。独り善がりな理想と信念が通用しないのも外交の本質であり、交渉とは相手と同等以上の立場になって、初めて双方が聞く耳を持つ関係が成り立つ。彼の主張は「理想」ではあっても、現実はそんなに甘くはない。

これまた失礼な言い方かもしれないが、後藤さんに限らず、SEALDsという学生団体の活動を見て思うのは、彼らは権力と対峙し、反体制を謳う「反骨」な自分に酔いしれているだけではないのか。彼が言うように日本と平和を本気で愛しているのであらば、いま現実に起こっている脅威に目を背けず、きちんと向き合って冷静に解決する術を考えるべきではないのか。感情論や精神論ばかりが先立つ主張は、はっきり言って無意味である。デモの参加者が、口汚く現政権を罵っているさまを見ていると、ただただ興ざめするばかりで、彼らの訴えは何一つ心に響いてこない。

それでも、SEALDsの運動をかつての「60年安保闘争」と重ねる向きもある。だが、国会突入を図って警官隊と激しく衝突した当時の勢いとは比べものにならない。主催者がデモの参加者を水増ししたり、仰々しく報道するメディアもあるが、多くの国民は今回の安保法案の成り行きを冷静に見守っている。

60年安保の真っただ中、当時の岸信介首相と対峙し、デモを主導した元全学連のリーダーは、昭和62年に岸元首相が亡くなった際、次のような弔文を書いて、その死を悼んだという。

「あなたは正しかった」

「SEALDsの『仮面』を剥ぐ」(iRONNA)
 → http://ironna.jp/theme/353
「SEALDsというヘイトな人々」(iRONNA)
 → http://ironna.jp/theme/345
「学生たちに理性と良心の放擲をそそのかすサヨクな大人ども」(iRONNA)
 → http://ironna.jp/article/1947


 盲目的な信念というものは、それが如何ほど激しく生と死を一貫し貫いても、さまで立派だとは言えないし、却って、そのヒステリィ的な過剰な情熱に濁りを感じ、不快を覚えるものである 。

── 坂口安吾(『青春論』)