NAKAMOTO PERSONAL

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ゴルディロックスの法則

ゴルディロックスの法則を使ってモチベーションを保ち続ける方法」(ライフハッカー
 → http://www.lifehacker.jp/2016/08/160811_keep_motivation.html

1955年、カリフォルニア州アナハイムにディズニーランドがオープンしたとき、10歳の少年がやってきて、何か仕事をもらえないかと尋ねました。当時は労働法もいいかげんであり、少年は、訪問客に1冊50セントのガイドブックを売る仕事をもらうことができました。
1年もしないうちに、少年はディズニー・マジックショップに配置換えとなり、年上の従業員からマジックを習うようになりました。いつしか、ジョークを言いながら、簡単なマジックを訪問客に試すようになります。しばらくすると、自分が好きなのはマジックではなく、パフォーマンスそのものだと気づきました。そして、将来はコメディアンになるのだと心に決めます。
高校に入ると、ロサンゼルスの小さなクラブでパフォーマンスをはじめます。観客は数えるほどで、ショーもごく短いものでした。たいていは、5分以上ステージに立つことはありませんでした。また、ひどいときには、観客が誰もいないことさえありました。
決して華やかなショーではありませんでしたが、着実に上達していました。初めは1、2分しか続かなかったマジックショーが、高校生の間に、5分、10分と伸びていきました。19歳になると、いくつかのクラブで週に一度、20分のパフォーマンスをするまでになりました。もっとも、時間をもたせるために、ポエムを3つほど朗読しなければなりませんでしたが、それでも上達し続けているのは確かでした。
その後10年、さまざまな実験をしながら、パフォーマンスを磨き続けました。放送作家の仕事に就くと、少しずつ自らもテレビの舞台に立つようになります。1970年代中頃には、『サタデー・ナイト・ライブ』や『トゥナイト・ショー』にレギュラー出演するまでになりました。

キャリアが15年になろうとするころ、突然、大ブレイクの時が訪れます。90日で85都市を回り、オハイオ州では1回のショーに18695人の観客が集まりました。ニューヨークの3日間公演では、45000枚のチケットが完売しました。こうしてまたたくまにトップに登り詰め、その時代で最も重要なコメディアンのひとりとなったのです。
その男の名は、スティーブ・マーティンです。


スティーブ・マーティンの成功までの長い道のり

最近、スティーブ・マーティンの素晴らしい自伝『Born Standing Up』を読み終えました。
コメディーは小心者には向いていません。ステージで笑いがクスリとも起きなかったときの恐怖は想像するだけで身震いがします。マーティンはそれを18年間もやり続けました。「勉強に10年、磨きをかけるのに4年、ブレイクするのに4年かかった」と彼は語っています。マーティンの物語は、モチベーション、根気、一貫性の大切さを教える、素晴らしい題材となっています。
私たちはなぜ、あるゴールに向かってはモチベーションを保てるのに、ほかのゴールには保てないのか? なぜ、これこれをすると宣言したのに、数日で諦めてしまうのか? 自然とモチベーションが保てるタスクと、そうでないタスクにはどんな違いがあるのか?
「モチベーション」に関する研究が、何十年にもわたり行われてきました。まだ解明すべきことはたくさんありますが、ほぼ間違いなくわかっていることがあります。それは、モチベーションを保つには「ちょうど処理できるくらいの難易度」のタスクに取り組むのが1番だということです。


ゴルディロックスの法則

人間は挑戦することが大好きですが、それは、そのタスクの難易度が適切な範囲にあるときに限られます。
たとえば、テニスの試合をするところをイメージしてください。真剣勝負をする相手が4歳の子どもだとしたら、すぐに飽きてしまうでしょう。あまりにも簡単に勝てるからです。一方、ロジャー・フェデラーセリーナ・ウィリアムズなど、プロのテニスプレイヤーが相手ならどうでしょうか。こんどは、別の理由でやる気がなくなってしまうでしょう。勝つことがあまりにも難しいからです。
それでは、自分と同じくらいの実力の人と試合をしたら? 試合は、一進一退の様相を呈します。勝利が見えていますが、ほんの少しも気を抜くことができません。神経は研ぎ澄まされ、外野の音は聞こえなくなります。持てる力すべてをこの一瞬に賭けるのです。このとき、あなたが向き合っている課題は「ちょうどいい」難しさと言えます。勝てる保証はないが、その可能性はあるという状態が続きます。科学は、こうした「ちょうどいい」難易度のタスクに取り組み続けることで、長期にわたりモチベーションを保てることを発見しました。
自分の実力より明らかに下にあるタスクは退屈に感じます。実力をはるかに上回るタスクはやる気をくじきます。一方、ちょうど成功するか失敗するかの境界線にあるタスクは、私たち人間の脳に著しいやる気をもたらします。現在の実力をほんの少しだけ上回るスキルをマスターしようとするときに、最もやりがいを感じられるのです。
この現象は、ゴルディロックスの法則と呼ばれています。現在の実力のちょうど上限くらいにあるタスクに取り組むときに人は最もモチベーションを感じる、という法則です。
マーティンが歩んだコメディアンとしてのキャリアは、現実世界におけるゴルディロックスの法則のよい事例となっています。成長するにつれ、コメディーショーを長い時間続けられるようになっていきましたが、その増え方は1分、2分とわずかずつでした。いつも新しいネタに挑戦しましたが、その一方で、必ず笑いがとれるネタもいくつかキープしていました。そこには、ちょうどモチベーションを保たせるだけの勝利と、ちょうどハードワークを要求するだけの失敗があったのです。


成果を計測する

モチベーションを保ち続ける方法を知りたいなら、押さえておくべきことがもう1つあります。それは、ハードワークと幸福を完璧に調和させることと関連があります。
ちょうどいいレベルの課題に取り組むことは、モチベーションだけでなく、幸福を高めるうえでも重要な役割を果たすことがわかっています。心理学者のギルバート・ブリム氏は、「人間に幸福をもたらす重要な源の1つは、適切な難易度のタスクに取り組むことである。難しすぎても簡単すぎてもいけない」と語っています。
この、幸福とピークパフォーマンスが調和した状態を、「フロー」と呼ぶこともあります。アスリートやパフォーマーが「ゾーンに入った」と言うときに経験している状態がフローです。目の前のタスクに完全に集中し、ほかのことが消え去ってしまうときに経験する心の状態とも言えます。
パフォーマンスがピークに達するこの状態に入るためには、難易度がちょうどいいタスクに取り組むだけでなく、成果がすぐにわかるようにする必要があります。心理学者のジョナサン・ハイト氏は、フロー状態に入る鍵の1つは、「それぞれの段階において、成果のフィードバックがすぐに得られる」ことだと語っています。
成果が即時にわかると、モチベーションが劇的に高まります。スティーブ・マーティン氏はジョークを言うたびに、観客が笑ったかどうかを瞬時に知ることができました。爆笑をとることが、どれほど中毒性があるかを想像してみてください。素晴らしいジョークを1つ言うたびに、マーティン氏はポジティブ・フィードバックの嵐を受け取ったのです。それは、恐怖を乗り越え、何週間もがんばり続けるのに十分なパワーをくれたはずです。
何をするかによって、計測方法は変わりますが、いずれにせよ、モチベーションと幸福を手に入れるには計測が不可欠です。テニスでは、ポイントを取ったり取られたりすることが、即時のフィードバックになっています。どんな形にせよ、モチベーションを保つには成果を目に見えるようにする必要があります。勝利をその目で確かめる必要があるのです。


モチベーションの2条件

長期にわたってモチベーションを保つ秘訣を整理すると、次のようになります。
ゴルディロックスの法則にしたがって、ちょうどいい難易度のタスクに取り組む
成果を計測し、できるかぎり、即時のフィードバックが得られるようにする
人生をより良くしようと思い立つのは簡単なことですが、行動を続けるのは簡単なことではありません。モチベーションを保ちたいなら、ちょうどいい難しさのタスクに取り組み、フィードバックがすぐに得られるようにしてください。