負け犬の遠ぼえ
「【野口健の直球&曲球】『強行採決』という言葉は負け犬の遠ぼえ」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/150924/clm1509240010-n1.html
安全保障関連法案に対し、国民の間では賛否両論、さまざまな意見がある。国会周辺では反対運動や賛成運動もあった。色々な意見が自由に飛び交うのは健全な社会の証しだ。また、学生のような若い人たちが声を上げたのも社会にとってはいい風潮だろう。
しかし、採決に対し野党議員の中から発せられた「強行採決は許されない」といった言葉にはどれだけの意味があるのだろうか。「民意を無視するな」との声も耳にするが「民意」とは何か。
昨年7月、安倍政権は「安全保障関連法案」に関し、閣議決定を行い、大きく報道された。そして12月の衆院選挙。自民党の選挙公約には「安全保障関連法案」が含まれていた。選挙公示前日の朝日新聞(12月1日付)1面にも「多様な争点 争う各党」との見出しに「アベノミクス」「集団的自衛権」「原発」の3つが大きく紹介されている。つまり多様な争点の中においても「集団的自衛権」は主要な争点の一つとして注目された。その選挙結果は周知のとおりだろう。
選挙公約は有権者がどの候補者、どの政党に投票するのかを判断する上で重要な材料となる。そして選挙によって選ばれた政治家はそれぞれの有権者にとっての代表者であり代弁者である。つまり衆参両院717人は民意の集合体だ。選挙はそういう重みがある。その政治家たちが一定の審議を行った後、合法的な手続きの上で採決を行うことを「強行」などと表現する行為こそ民意への軽視ではないだろうか。ましてや審議妨害のために野党議員らが委員長を閉じ込めようとしたのは民主主義への冒涜(ぼうとく)である。
民主党は「強行採決に断固反対!」と強く訴える。しかし、その民主党政権時代の3年3カ月で少なくとも24回もの「強行採決(委員会)」を行っているのだ。これは、安倍政権(第2次・第3次)の11回よりも多い。子ども手当法案や、高校無償化法案しかり。公務員改革法案の際、野党であった自民党は「審議時間を十分に取らずに強行採決した」とビラまで作って民主党政権を批判した。
そう考えるとこの「強行採決」という言葉は負け犬の遠ぼえに聞こえなくもない。
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【プロフィル】野口健
のぐち・けん アルピニスト。1973年、米ボストン生まれ。亜細亜大卒。25歳で7大陸最高峰最年少登頂の世界記録を達成(当時)。エベレスト・富士山の清掃登山、地球温暖化問題、戦没者遺骨収集など、幅広いジャンルで活躍。著書に『世界遺産にされて富士山は泣いている』(PHP新書)など。
「【野口健の直球&曲球】『生』を感じさせてくれる登山」(産経新聞) http://www.sankei.com/column/news/150402/clm1504020007-n1.html
「【野口健の直球&曲球】戦後70年「真の自立」考えるいい機会 」(産経新聞) http://www.sankei.com/column/news/150730/clm1507300008-n1.html
『野口健公式ウェブサイト』 http://www.noguchi-ken.com/
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