NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

ひどく寒い日でしたから。

寒い朝。

 「私はエジプトに行くのではありません」とツバメは言いました。「死の家に行くんです。『死』というのは『眠り』の兄弟、ですよね」
 そしてツバメは幸福の王子のくちびるにキスをして、死んで彼の足元に落ちていきました。
 その瞬間、像の中で何かが砕けたような奇妙な音がしました。それは、鉛の心臓がちょうど二つに割れた音なのでした。ひどく寒い日でしたから。

── オスカー・ワイルド『幸福の王子』

幸福の王子

幸福の王子

幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫)

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