NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

一億総幼児化

「【産経抄】一億総幼児化 1月20日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150120/clm1501200004-n1.html

 昭和31年11月の早慶戦の最中だった。神宮球場の一塁側早大応援団のどまんなかで、一人の男が慶大の旗を振って、早大応援団ともめる騒ぎがあった。その様子は当日夜の視聴者参加番組で流された。実は男は、番組の出演者だった。

 怒った六大学野球連盟は、翌日の早慶戦の中継を拒否する。一連の経緯を大々的に報じた東京新聞に、談話を寄せた評論家の大宅壮一が、「白痴化」の風潮を嘆いた。これがテレビを批判する言葉として知られる、「一億総白痴化」が生まれるきっかけとなった(『テレビの青春』今野勉著)。

 それに倣えば、インターネットの普及にともなって、日本人の幼児化が進みつつあると言えまいか。スーパーで菓子の容器につまようじを突き刺す様子などを撮影して、ネットの動画サイトに投稿していた19歳の少年が、警視庁に逮捕された。コンビニエンスストアで万引をしたかのように見せかける映像など、少年が公開した動画は60本を超える。

 アイスクリームの冷凍ケースに入り、ピザ生地で顔面を覆う。飲食店のアルバイト従業員らが、ネットに投稿していた非常識きわまりない写真を思い出す。大阪市の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」で、迷惑行為を繰り返したあげく、自分たちの振る舞いを「偉業」と、ネット上で自慢していた大学生もいた。

 これらの悪ふざけに共通しているのは、ネット社会で目立ちたいという、幼稚な願望である。幼児が母親の関心を引くために、わざとおもちゃ箱を倒したり、だだをこねたりする、いわゆる「見て見て攻撃」に似ている。

 少年はどんな子供時代を送ったのだろう。世間をあざ笑うような動画から、悲痛な叫び声が聞こえてくる。「寂しくてたまらない」と。

『2014年08月13日(Wed) 一億総ガキ社会』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20140813



安吾

俗なる人は俗に、小なる人は小に、俗なるまま小なるままの各々の悲願を、まっとうに生きる姿がなつかしい。

―― 坂口安吾(『日本文化私観』)