平気で生きる。
明治35年(1902年)の今日、正岡子規が亡くなりました。
子規は大喰いです。病人なのに。
亡くなる1年前、明治34年9月19日の日記。
九月十九日 晴
便通
朝食 粥三碗 佃煮 奈良漬
午飯 冷飯三碗 堅魚(かつお)ノサシミ 味噌汁サツマイモ 佃煮 奈良漬 梨一ツ 葡萄一房
間食 牛乳五勺ココア入 菓子パン 塩煎餅 飴一ツ 渋茶
便通及包帯取換
晩飯 粥三碗 泥鰌(どじょう)鍋 キヤベツ ポテトー 奈良漬 梅干 梨一ツ
- 作者: 正岡子規
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脊椎カリエスに冒され、体中に穴が空き、膿が流れ出る。
7年もの間、苦しみ泣き続けた。
病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。僅かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、蒲団(ふとん)の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。甚(はなは)だしい時は極端の苦痛に苦しめられて五分も一寸も体の動けない事がある。苦痛、煩悶、号泣、麻痺剤、僅かに一条の活路を死路の内に求めて少しの安楽を貪(むさぼ)る果敢(はか)なさ、それでも生きて居ればいひたい事はいひたいもので、毎日見るものは新聞雑誌に限つて居れど、それさへ読めないで苦しんで居る時も多いが、読めば腹の立つ事、癪(しゃく)にさはる事、たまには何となく嬉しくてために病苦を忘るるやうな事がないでもない。
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心中やら自殺やら、命を軽んずる事件が多い昨今、子規の生き様を見習わなくては。
余は今迄禅宗の所謂(いわゆる)悟りといふものを誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居ることであった。
安吾にも曰く、
いつでも、死ねる。そんな、つまらんことをやるな。いつでも出来ることなんか、やるもんじゃないよ。
── 坂口安吾(『不良少年とキリスト』)