NAKAMOTO PERSONAL

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日本語の「性差」を大切に

「国語世論調査 日本語の『性差』を大切に」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/110920/edc11092002440001-n1.htm

 文化庁が毎年実施している「国語に関する世論調査」の平成22年度の調査結果が公表された。

 「姑息(こそく)」や「雨模様」などが本来とは違う意味で用いられる例の多いことが明らかになった。

 本来は雨が降りそうな様子をいう「雨模様」は、テレビアナウンサーまでが傘の列を前に「あいにくの雨模様」と語るなど、降雨の際でも頻繁に使われ、半数近くの人が“誤用”するのも無理ないことかもしれない。

 これを言葉の変化と捉えるか揺れ、乱れと捉えるかは識者でも意見が分かれるところだ。歴史の中で意味や語形が変わった言葉は数多く、例えば「独擅場(どくせんじょう)」の誤読から生じた「独壇場(どくだんじょう)」は今ではすっかり定着しており、本来の「独擅場」を用いるとかえってけげんに思われる恐れもある。

 そこで大切なのは、私たちが何げなく使っている言葉が世間一般に照らして正しいかどうか、常に関心を払うことであり、日常の読書と辞書をひく習慣によって国語知識を増やすことである。

 「来れる」など文法上誤りとされる「ら抜き」言葉が一層浸透していることも明らかになった。一方でそれを「聞くに堪えない」とまで感じる人もいる。場にそぐわない服装がその人の教養や人格までも疑わせることに鑑(かんが)みて、「ら抜き」も、仲間内では使っても改まった場面では使わないといった良識が求められよう。

 調査結果で驚いたのは、男女の言葉遣いに違いがなくなりつつあることを容認する人が60%近くもいたことである。10年前の調査に比べて約16ポイントも増えている。
 昨今は女性タレントらがテレビ番組で「お前」「腹減った」などと口にし、その影響だろうか、電車内でも女子高生らが実に乱暴な言葉遣いをして周りの顰蹙(ひんしゅく)を買っている。

 男女には肉体や声質の違いがあるのと同様に、それぞれの性に備わった精神的個性がある。日本語の大きな特色でもある性差に基づいた言葉遣いも個性の一つで、それが繊細にして豊かな情感をもたらしてくれる。男女同一の言葉はむしろ、互いの美質を尊重する男女共生の精神に反しよう。

 言葉は歴史と文化そのものである。男女の「らしさ」を失った深みのない言葉遣いこそ「日本語の乱れ」であると、深刻に受け止めるべきではなかろうか。