NAKAMOTO PERSONAL

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phobia

「『4』を怖がるのは『テトラフォビア』『13』を避けるのは『トリスカイデカフォビア』、では『666恐怖症』は?」(GIGAZINE
 → http://gigazine.net/news/20110208_feared_numbers/

 中国や韓国、日本を含む漢字文化圏で四の字を忌み嫌う風習は、欧米では「Tetraphobia(テトラフォビア)」と呼ばれます。「テトラパック」や「テトラポッド」と同じく「4」を意味する「テトラ」と、「アクロフォビア(高所恐怖症)」や「クラストロフォビア(閉所恐怖症)」のように「恐怖症」を意味する「フォビア」を組み合わせて「4恐怖症」としているわけです。

 一方、ビルに13階がない、ホテルの部屋番号が「1665号室」から「1667号室」へ飛んでいるなど、西洋でよく避けられる数字には「13」や「666」が挙げられます。「13」への恐怖は「Triskaidekaphobia(トリスカイデカフォビア)」と呼ばれていて、ちょっと長ったらしいですが一度覚えれば一息で言えるレベル。しかし、「666恐怖症」にはさらに早口言葉のようなややこしすぎる名前が付けられているようです。

 特定の数を不吉とする「恐怖症」の名前やその由来などの詳細は以下から。


 西洋で「13」が忌避される文化は、主に英語圏やドイツ、フランスなどで「13日の金曜日」が不吉とされることと結びつけられます。よく言われる「キリストの磔刑13日の金曜日だった」というのは誤解とのことですが、キリストを裏切ったイスカリオテのユダが最後の晩餐で13番目に席についたことや、北欧神話で12人の神の祝宴へ招かれざる客として乱入した13番目の神ロキがヘズをたぶらかし善神のバルドルを殺害させ、その葬儀に13番目の客として参列したこと(13人が集まるとその誰かが翌年に死ぬという迷信の由来となった)、古代ペルシアでは黄道十二星座の各星座がそれぞれ千年ずつ世界を統治し、その終わりには空が落ち地が崩れ世界は破滅するとして「13」がカオスと結びつけられたことなど、「13」が不吉とされる理由には諸説があります。

 「ユダが13番目の使徒」というのは誤解で、ユダを含む十二使徒とイエスの合計13人が最後の晩餐で食卓を囲みました。

 13への恐怖は「テトラフォビア」と同様にギリシャ語の数と「フォビア」を組合せ、「Triskaidecaphobia(トリスカイデカフォビア)」と名付けられています。「Tris」は「3」、「Kai」は「and」、「Deca」は「10」という意味なので、「Triskaideca」は「3+10」と分解すると覚えやすいかもしれません。

 飛行機の座席番号に「13」がない、というのはよく聞きますが、ベルギーのブリュッセル航空のロゴは当初13個のドットがアルファベットの小文字の「b」をかたどるデザインだったものの、乗客の声を受けてドットが14個に変更され、2007年3月の就航前にすべての機体にドットが描き足されたそうです。

 では、西洋で忌避されるもう一つの数字「666」への恐怖はというと、やはりギリシャ語で「666恐怖症」という意味の「Hexakosioihexekontahexaphobia(ヘクサコシオイヘクセコンタヘクサフォビア)」と呼ぶそうです。

 頭に「666」のアザを持つ少年を描く1976年のホラー映画「オーメン」や2006年6月6日に公開されたそのリメイクによって知ったという人も多いかもしれませんが、キリスト教文化圏で「666」が不吉とされるのは、ヨハネの黙示録に記された「獣の数字」であるため。「獣(Beast)」とはヨハネの黙示録の中でサタンの化身である赤い竜を指して使われる言葉です。

 アメリカでは第40代大統領のロナルド・レーガン夫妻が1989年の任期満了後にホワイトハウスを離れロサンゼルスのベル・エアに住宅を購入した際、住所を「666 St. Cloud Road」から「668 St. Cloud Road」に変更したことが知られています。また、最近では2006年6月6日付近が出産予定日だった女性たちが、生まれてくる子どもの誕生日が「06/06/06」となることへの不安を表明したという例もあります。

 「666号」と呼ばれる道路はアメリカやカナダ、イギリス、アイルランドなどに何本かありますが、カナダのOntario Highway 666は1985年に「668」へ、通称「Devil's Highway」とも呼ばれていたアメリカのU.S. Route 666は2003年に「491」へと番号を変更されています。

 「名前を付ければ病気になる」というわけではありませんが、「どちらかというとクモが嫌い」というレベルでなくパニック発作を起こすほどクモに恐怖を感じる「アラクノフォビア(クモ恐怖症)」のように、時に日常生活に支障をきたすほど「病的に怖がる」のであれば、特定の数に対する恐怖も「病気」と言えるのかもしれません。

 しかし、「フォビア」という接尾語は精神疾患としての恐怖症だけでなく、同性愛者に対する偏見や差別を「Homophobia(ホモフォビア)」、いわゆる「反日」的な感情や風潮を「Japanophobia(ジャパノフォビア)」と言うように、社会的な嫌悪や忌避の意味で使うこともあります。「フォビア」を持つ人は「-phobe(フォーブ)」と呼ばれ、同性愛者に差別的な人は「Homophobe」、日本嫌いは「Japanophobe」、ジャスティン・ビーバー嫌いは「Bieberphobe」と言った具合です。ほかに変化形としては「-phobic」もあり、「ビーバー嫌い的な行動」なら「Bieberphobic behaviour」、「体育会系嫌いな教師」なら「Jockaphobic teacher」というように、「-phobia」「-phobe」「-phobic」ともに日常会話のなかで何にでも接尾して造語が作られ、広く使われます。

 「フォビア」は元はと言えばギリシャ語で「嫌悪」ではなく「恐怖」を意味する言葉。社会的な嫌悪や偏見を指して使われる場合にも「嫌悪の裏には恐怖がある」と考えると、恐怖症の克服のように「対象を知ること」「少しずつ慣れること」といったアプローチができるのではないでしょうか。

 ちなみに、「フォビア」の反対としてはギリシャ語の「フィリア(友愛)」を由来とする接尾語の「-philia」があり、こちらも「-phile」「-philic」と変化します。「ペドフィリア」や「ネクロフィリア」などといった性的倒錯を指す言葉によりネガティヴなイメージが強いかもしれませんが、例えばオーディオマニアを「Audiophile(オーディオファイル)」、愛書家を「Bibliophile(ビブリオファイル)」というように、悪い意味でなく使うこともできます。

 イギリス愛好家の「Anglophile(アングロファイル)」とイギリス嫌いの「Anglophobe(アングロフォーブ)」のように、語尾を間違えると全く逆の意味になってしまうので、覚えておくとよいかもしれません。

 というわけで、ここまで読むと肝心の「666恐怖症」の名前は忘れてしまったという人も多いのではないでしょうか?正解は、「Hexakosioihexekontahexaphobia(ヘクサコシオイヘクセコンタヘクサフォビア)」です。