【常用漢字見直し】
「【常用漢字見直し】使用制限は漢字の生命力奪う 加地伸行・立命館大教授」(産経新聞)
→ http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100607/acd1006072104001-n1.htm
常用漢字が追加され、より多くの漢字が一般的に使えるようになるのはいいことかもしれないが、そもそも私には「常用漢字」をつくって、漢字を制限する理由がよく分からない。
例えば今回の答申では、「鷹」という字が常用漢字から落とされているが、根拠がよく分からない。「鷹」を落とすぐらいなら、「鳩」を落とせばいい。
確かに、小中学生が最低限、書けた方がいい漢字を決めておくというのは理解できる。しかし、政府が、わざわざ「常用漢字」を決めて、使える漢字を制限するような発想は、間違っている。
そんなことをしなくても、覚えるべき漢字は自然と定まり、困ることはない。日本でも中国でも、本格的に古典を勉強する場合、必要な漢字は5千字、専門的に研究する者でもせいぜい6千字ぐらい。一般的な中国人が読み書きする漢字は3千字程度といわれている。
そんなに多くの漢字は書けないし、読めないのだ。分からなければ辞書を引けばいい。むやみに制限することはやめて、その代わりに、ルビ(読み仮名)をふるようにすればいい。
漢字はもともと4千字程度が造られた。それが歴史を経て、17世紀までには5万字まで増えた。つまり漢字の歴史は、創作の歴史だ。例えば「躾(しつけ)」という漢字は、日本でできた「国字」だが、身を美しくするというニュアンスがよく出ている。
漢字は、私たちの生活や感覚に根付き、使うものなのだ。神棚に飾って、あがめ奉るものではない。「働」という字は、人を意味する「にんべん」に、「動」という字が付いているが、やはり国字。それが中国に“逆輸入”された。漢字には、そういう広がりもある。
漢字を制限するということは、そういう漢字の豊かさや広がり、生命力を失わせることになる。
「『鷹』を落とすぐらいなら、『鳩』を落とせばいい。」
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