NAKAMOTO PERSONAL

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道徳教育に就いて

「【主張】道徳教育 心のノートで公徳心養え」(産經新聞
 → http://sankei.jp.msn.com/life/education/090323/edc0903230336000-n1.htm

 新年度から小中学校で新しい学習指導要領が先行実施され、道徳教育の充実が図られる。徳育は学力向上とともに公教育再生の要である。学校現場は指導法を工夫して取り組んでもらいたい。
 文部科学省は全小中学生に配布している道徳の副教材「心のノート」を改訂した。新指導要領を踏まえた一斉改訂だ。
 心のノートは、神戸の児童連続殺傷事件などをきっかけに、平成14年度から使われている。命の大切さなどの教育の重要性が指摘され、日常生活の場面を題材に考える内容だ。
 改訂版では「きまりを守る」といった規範意識や公共心の育成など、新指導要領で重視される項目が増えて充実した。また若者の勤労意欲低下など最近の課題にも対応し、「働くことのよさ」をテーマにしたページも加わった。
 日常のあいさつ、助け合いの大切さなどの心のノートでも取り上げられている徳目は、以前は家庭や地域の中で当たり前に教えられ、はぐくまれてきた。
 だが家庭のしつけがきちんと行われず、幼児期から集団生活に慣れない子供たちが増え、学校の道徳教育の重要性は増している。
 一方で、道徳教育は教師によって指導の差が大きい。一部教職員組合は心のノートを「使わない」ことを組合活動の成果とするあきれた例さえあった。
 学校現場には道徳教育を「押しつけ」などと嫌う風潮があるが、公徳心や正義などを毅然(きぜん)として教える教育が必要なときである。
 最近の意識調査で、子供の勉学意欲低下や将来を悲観的にみる若者など気になる結果が目立つ。東京都教育委員会のアンケートでは中高生は自分自身を好意的にとらえておらず、自尊感情が低いとの結果が出た。都教委が「自分が嫌いでは学習意欲もわいてこない」と懸念するのはもっともだ。
 都教委では、例えば失敗や間違いも大切な経験であることを教えるなど、子供が自信を持てるような指導に取り組むという。
 また大阪府教委は、独自の授業「志(こころざし)学」を府立高校に導入するなど、小中学校を含めて「将来について考える機会を設ける」という。
 道徳以外でも、自虐的な歴史教育など子供たちの誇りや夢を


温故知新。


会津藩『幼年者心得之廉書』

その一
 毎朝早く起きて、顔や手を洗い、歯を磨き、髪の毛を整え、衣服を正しく着て、父母に朝のご挨拶をしなさい。そして、年齢に応じて部屋の中を掃除し、いつお客様がお出でになってもよいようにしなさい。


その二
 父母及び目上の方への食事の給仕、それからお茶や煙草の準備をしてあげなさい。父母が揃って一緒に食事をする時は、両親が箸を取らないうちは子供が先に食事をしてはいけません。理由があって、どうしても早く食べなければならない時は、その理由を言って許しを得てから食事をしなさい。


その三
 お父さんやお母さんが家の玄関を出入りなさったり、あるいは目上の方がお客様として玄関にみえられた時、お帰りになる時は、お客様の送り迎えをしなければいけません。


その四
 子供が外出をする時は、お父さんやお母さんに行き先を告げ、家に帰ったならば只今戻りましたと、挨拶をしなさい。すべて何事も先ず父母におうかがいをし、自分勝手なことをすることは許されません。


その五
 お父さんやお母さん、それから目上の方と話をする場合は立ちながらものを言ったり、立ったままでものを聞くことはいけません。また、いくら寒いからといって自分の手を懐の中に入れたり、暑いからといって扇を使ったり、衣服を脱いだり、衣服の裾をたぐり上げたり、そのほか汚れたものをお父さんやお母さんの目につく所に置くようなことをしてはいけません。


その六
 お父さんやお母さん、ならびに目上の人の方々から用事を言いつけられた時は、謹んでその用件を承り、そのことを怠らないでやりなさい。なお、自分を呼んでおられる時は、速やかに返事をしてかけつけなさい。どのようなことがあっても、その命令に背いたり、親を親とも思わないような返事をしてはいけません。


その七
 お父さんやお母さんが寒さを心配して。衣服の重ね着をおすすめになったら、自分では寒くないと思っても衣服を身につけなさい。なお、新たに衣服を用意して下さった時は、自分では気に入らないと思っても、謹んで頂きなさい。


その八
 お父さんやお母さんが常におられる畳の上には、ほんのちょっとしたことでも上がってはいけません。また、道の真ん中は偉い人の通るところですから、子供は道の端を歩きなさい。そして、門の敷居は踏んではいけないし、中央を通ってもいけません。ましてや藩主や家老がお通りになる門はなおさらのことです。


その九
 先生またはお父さんお母さんと付き合いがある人と途中で出会った時は、道の端に控えてお礼をしなさい。決して軽々しく行き先など聞いてはいけません。もし、一緒に歩かなければならない時は、後ろについて歩きなさい。


その十
 他人の悪口を言ったり、他人を理由もないのに笑ったりしてはいけません。あるいは、ふざけて高い所に登ったり、川や水の深い所で危険なことをして遊んではいけません。


その十一
 すべて、先ず学ぶことから始めなさい。そして、学習に際しては姿勢を正し、素直な気持ちになり、相手を心から尊敬して教わりなさい。


その十二
 服装や姿かたちというものは、その人となりを示すものであるから、武士であるか、町人であるかがすぐにわかるように、武士は武士らしく衣服を整えなさい。決して他人から非難されるようなことのないようにしなさい。もちろん、どのように親しい間柄であっても、言葉遣いを崩してはいけません。自分より下の者や品のない人間と、同じように見られるようなことをしてはなりません。また、他の藩の人達に通じないような、下品な言葉遣いをしてはいけません。


その十三
 自分が人に贈り物をする時でも、父がよろしく申しておりました、と言い添え、また、贈り物を頂いた場合が、丁寧にお礼を述べながら父母もさぞかし喜びます、と言い添えるようにしなければなりません。すべてに対して父母をまず表に立てて、子が勝手に処理するのではないことを、相手にわかってもらえるようにしなければなりません。


その十四
 もしも、お父さんやお母さんのお手伝いをする時は、少しでも力を出すのを惜しんではいけません。まめに働きなさい。


その十五
 身分の高い人や目上の人が来た時には、席を立って出迎え、帰る時にも見送りをしなければなりません。
 それにお客様の前では、身分の低い人はもとより、犬猫にいたるまで決して叱り飛ばしてはいけません。
 また、目上の人の前で、ものを吐いたり、しゃっくりやげっぷ、くしゃみやあくび、わき見、背伸び、物に寄りかかるなど、失礼な態度に見えるような仕草をしてはいけません。


その十六
 年上の人から何かを聞かれたならば、自分から先に答えないで、その場におられる方を見回して、どなたか適当な方がおいでになっていたら、その方に答えてもらいなさい。自分から先に、知ったかぶりをして答えてはいけません。


その十七
 みんなで集まってわいわいお酒を飲んだり、仕事もしないで、女の人と遊ぶいかがわしい場所に出かけるのを楽しみにしてはいけません。特に男は、年が若い頃は女の子と二人だけで遊びたい本能をおさえることは、なかなか難しいとされています。だからといってそのような遊びを経験し、癖ともなれば、それこそ一生を誤り、大変不名誉な人生を送ることになりかねません。だから、幼い頃から男と女の区別をしっかりし、女と遊ぶ話などしないことが大切なのです。あるいは、下品な言葉を発して周りの人を笑わせたり、軽はずみな行いをしてはいけません。なお、喧嘩は自分で我慢が出来ないから起こるものであって、何事も辛抱強く我慢して喧嘩をしないように、いつも心がけなさい。


また、会津の子供達には掟があった。「什(じゅう)の掟」である。

「什の掟」


一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ


二、年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ


三、うそを言うてはなりませぬ


四、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ


五、弱い者をいじめてはなりませぬ


六、戸外で物を食べてはなりませぬ


七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ


ならぬことはならぬものです。


『會津藩校日新館』 http://www.nisshinkan.jp/

会津藩というのは、封建時代の日本人がつくりあげた藩というもののなかでの最高の傑作のように思える。300に近い藩の中で肥前佐賀藩とともに藩士の教育水準が最も高く、さらに武勇の点では佐賀をはるかに抜き、薩摩藩と並んで江戸期を通じての二大強藩とされ、さらに藩士の制度という人間秩序を磨き上げたその光沢の美しさに至ってはどの藩も会津におよばず、この藩の藩士秩序そのものが芸術品とすら思えるほどなのである。」

─― 司馬遼太郎