NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

伏してぞ止まん

「産経抄」より
 → http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080128/trd0801280225000-n1.htm

 久しぶりに、東京都板橋区の東武東上線ときわ台駅を降り、近くの交番の前にある「誠の碑」を訪ねてきた。警視庁板橋署常盤台交番に勤務していた宮本邦彦警部の勇気を讃(たた)えるため、建てられたものだ。
 ▼宮本さんは昨年2月6日、線路内に入った女性を助けようとして、急行にはねられ、6日後に53歳の生涯を終えた。1周忌を前にして、その誠実な生き方が、『伏してぞ止まん ぼく、宮本警部です』(高木書房)という絵本になった。
 ▼札幌市に生まれた宮本さんは少年時代、外で遊ぶより読書を好み、仲間が教室の2階から雪の中に飛び込んでも、「決まりを破るのはいやだ」と、ただ一人加わらなかった。交番の前を通る子供たちにやさしく声をかけ、子供たちからは「宮本さん」と名前で呼ばれていた。
 ▼そんな宮本さんのどこから、自らを犠牲にして人の命を救う勇気がわいてきたのだろう。著者の山口秀範さんは、何度も読者に問いかける。絵本の題になった言葉は、宮本さんの父親の口癖で、「精いっぱい努力して、倒れるまでやめるな」という意味だという。
 ▼1週間前の1面トップ記事に付いた見出し「日沈む国」について、読者からお叱(しか)りの手紙をいただいた。「日出(い)づる国の誇りを持て、と教えられてきた者にとって、残念でならない」と。「政治の堕落、経済の低迷、そして悲惨な事件ばかり報じられている。日本を元気づけるような記事も読みたい」とも。
 ▼そういえば小欄もまた、まだ倒れたわけではないこの国のあれこれを、嘆いてばかりいた。絵本のなかで、宮本さんは死の直前、「お前も『伏してぞ止まん』で生きて行けよ」と一人息子に語りかける。日本人すべてが受け取るべき言葉かもしれない。

「線路内の女性を救助、殉職警官の勇気を絵本に」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080126-OYT1T00491.htm?from=main1


サン=テグジュペリは言います。

自己犠牲、危険、死に至るほどの忠誠。


これこそ


人間の高貴さをつくる修練の場だ。


たとえば


郵便飛行に命を懸けるパイロット。


たとえば


伝染病の患者の顔の上にかがみこむ医者。

―― (『サン=テグジュペリ 星の言葉』