NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

善意は悪である。

日曜朝の『ボクらの時代』(フジテレビ)が面白い。 → http://www.fujitv.co.jp/b_hp/jidai/


前々回のゲストは「森達也×林海象×佐野史郎」。



森達也

 あのね、人間ってみんな良い人ばかりなんですよ。これはぼくね、ドキュメンタリー撮ってるから普通の人より少しだけ多く色んな人に会ってるし、犯罪者とかテロリストとかにも会ってますけど、みんな良い奴ばっかりなんです。
 もちろん、社会的には色々いますよ。前科何犯であったりとか人殺しましたとかね。
 まぁでもみんな良い人ばっかりで、当たり前ですよ。人間ってのはそもそもみんな良い人ですよ。それが何かで色々罪を犯したりするけれど、そんな純度100%の悪なんてのはね、それはもうスターウォーズの世界だよね。
 絶対訳がある、訳を聞いたらそれはそうだよね。って納得できるし、人間ってのは愛すべき存在だなってところからまずはドキュメンタリーが始まると思うんだけど・・・、
 これだけ言っちゃうとすごく危ないね。それはもちろんね、多少短気な人とか、他者に対する想像力がちょっと薄い人とかね、そりゃそういう人もいっぱいいますよ。でも基本的には人に対して害悪でありたいと思う人はまずいない。
 でも、だからといって、そういった優しさ、純粋さが人を殺す場合もある訳ですよ。人を傷つける場合もある訳でね。
 正しくて善良だから人を殺さない訳じゃない。人を加害するという本質的な部分というか、それをもうちょっと考えるべきだろうなと思っている。


林海象

 ドラマも良い人も出るけど、悪い人も出るじゃない。必ず出るんで、どちらも同等と思って触る訳ですよね。だからものすごく、例えば世の中でいう悪い人とかさ、色んな事が起こってるじゃない。ものすごく興味があるんですよね。
 新聞記事見てさ、その場所行ってそこだけ切り取ってしまうとホントに多分その人が良い人なのか悪い人なのかわからない。
 それがドラマのキャラクターの基本ですよ。光の当たり方が違うだけなんですよね。同じ人間がさ。視点と光の当たり方と、ちょっとだけ躓(つまず)くんですよ、やっぱり間違える方ってのはさ。
 ホントに少し最初は本人が判らないくらいのところで横に行って、すごい長い時間でやるとすごい角度が曲がってるんですよ。で、本人は全然気づいてないんですよ。で、その予兆がみんなあるんですよね。必ず。
 でもホントはそうで、みんなそうなんだよね。実は。全員が。
 それで、取り返しがつかない局面に入っちゃうだけなんですよ。その悪いって言われてる人たちがね。
 だからどっちも気が乗るんだよね。書いてて。

 全く普通でニコニコしていてどこも何も悪く見えなくて本人も何も悪いことをしてる意識もない。けどやってる現象が悪い。
 これがもし映画の中に出てきたら究極の悪役ですよね。
 人は間違えるじゃない。必ず色んな事をさ。特に人数が多くなればなるほど間違えるんだよね。その前提をみんなすっ飛ばして話すからさ、戦争だってやってるし、めちゃくちゃ間違える訳じゃない。でも必ずやっちゃんだよね。人間ってさ。そうするとどこが悪いんだか悪くないんだか、わかんないよね。


森達也

 だって戦争だって他の国を侵略してやろうっていう戦争はほとんど無いんですよ。今の戦争は全部セキュリティなんですよ。正当防衛なんですよね。意識としては。
 レバノンもそう、イラクもそう、みんなセキュリティなんですよ。でも結局それで人を殺してる訳で・・・。でもそれは善意ですよね。自分を家族を、友人を守らなければいけない。
 「善意が悪」っていう発想をもう少し持たないととても怖いことになる。


『ボクらの時代』 http://www.fujitv.co.jp/b_hp/jidai/
森達也 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E9%81%94%E4%B9%9F
林海象 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9E%97%E6%B5%B7%E8%B1%A1
佐野史郎 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%90%E9%87%8E%E5%8F%B2%E9%83%8E


「悪人がいくら害悪を及ぼすからといっても、善人の及ぼす害悪にまさる害悪はない。」

ツァラトゥストラは、かく語りき