NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

一分

風邪気味なので、早寝。


『産経抄』より
 → http://www.sankei.co.jp/ronsetsu/sankeisho/070208/sks070208000.htm

 たとえ高給取りでなくても、精魂込めた匠(たくみ)の仕事には他に代え難い価値がある。線路に飛び出した自殺志願の女性を助けようとした警察官が、電車にはねられた事故もそうだ。53歳、地道な交番勤務の宮本邦彦巡査部長だ。巡査部長は「危ない。止まれ」と叫び、ホーム下に女性を押し込もうとしたが間に合わなかった。

 ▼彼の行為を知るにつけ、「一輪咲いても花は花」を思う。誰一人知らぬ間に一輪しか咲かなくても、そこには凛(りん)とした気高さがある。人知れぬ苦労をものともせず、他人を気遣う心があったのだろう。事件処理をぞんざいに扱う警官にうんざりしていたから、彼の一途(いちず)さに打たれる。

 ▼いまさら、「プロ根性」と説いても詮(せん)無いことながら、いま時の政治家、新聞記者も宮本巡査部長の無心の行為に学びたい。柳沢伯夫厚生労働相の「産む機械」発言が時代錯誤であることはもちろんだ。ただ、これを政治に利用しようとする野党やメディアの心根が浅ましい。

 ▼反論できないと知るや、寄ってたかって「女性差別だ」と罵声(ばせい)を浴びせる。子供の陰湿なイジメと違わないから、教育再生も少子化対策も彼らには託しがたい。武士には「武士の一分」があるように、政治家にも一分、職責があるはずだ。

 ▼柳沢厚労相も頭を垂れるだけでなく、自らの少子化対策を存分に語ったらどうか。米国でもバイデン上院議員が、ライバルのオバマ議員の論評で失言をした。「アフリカ系として初めての主流派で、頭がよくて前科もない」。すぐに謝罪をしたうえで、繰り返し釈明を尽くした。

 ▼プロ政治家の本分は、言葉狩りでも揚げ足取りでもない。党利党略の霧を吹き払い、法の制定者、政策の審議者としての言葉を聞きたい。


「東武線で女性を救出 重体の警官に回復祈る千羽鶴 【写真】」
 → http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20070209&j=0022&k=200702094645

 「女性を置いて逃げるわけにはいかなかったのだろう」と警視庁幹部。地域の住民にも慕われた宮本巡査部長が勤務する交番には、この日もお見舞いの花束が届けられるなど、回復を祈る声が広がった。

 交番近くの商店街。背は高くないが、がっしりした体格の宮本巡査部長は、交番でもベテラン格。商店主らからは親しみを込めて「主任」と呼ばれていた。

 「雨が降っても風が強くても、踏切近くの横断歩道で立ち番していた姿が目に浮かぶ」と事故現場近くで総菜店を営む河原弘さん(51)。「今どき珍しい、古き良き時代のお巡りさんだよ」

 同じ駅ロータリーの和菓子店経営国分政明さん(74)は、「今月二日、町内会で行ったパトロールに同行してもらったばかり。私たち地域住民にとって大事な人なんだ」と容体の好転を願った。

 警察庁でも宮本巡査部長が女性救出をあきらめなかったことに「警察官として立派な行為だ。なんとか持ち直してほしい」との声が漏れる。

 交番には事故翌日の七日から、住民から見舞いの千羽鶴や果物が届いている。千羽鶴の一つは、日常生活でときわ台駅を使い、社会科見学で交番を訪れることもある板橋区立富士見台小の五年生の児童らが作った。

『死を賭けた警察官がいる』 http://www.tanteifile.com/diary/2007/02/08_01/index.html