NAKAMOTO PERSONAL

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朝日 vs 毎日

「『おごるな』と毎日が 朝日社説に苦言」(J-CAST)
 → http://www.j-cast.com/2006/10/16003392.html

2006年10月16日付けの毎日新聞で、朝日新聞の社説が「おごるな」と苦言を呈された。新聞業界で、他紙の記事を批判するのは珍しいうえ、「毎日VS朝日」も極めて異例だ。


確かに12日の朝日新聞の社説は酷かった。

内容以前に、この文章には品格の欠片もない。
いやしくも一国の首相に“ニュー安倍”とは何事か。
朝日新聞の人を小馬鹿にしたような、品の無い記事には腹が立つ。



毎日新聞【発信箱】2006年10月16日(月曜日)

本当は悔しい?朝日新聞 与良正男(論説室)
 安倍晋三首相が村山談話の踏襲など歴史認識を軌道修正したことについて、先週の本欄で「首相の変節を評価する」と書いた。最初は「首相の立派な変節」とか、もっと皮肉った見出しを考えたが、首相も国を思って持論を抑え日中、日韓会談を再開させたのだ。率直に評価すべきだと思い直した。

 こんな話を改めて書いたのは、12日付の朝日新聞社説「君子豹変(ひょうへん)ですか」を読んだからだ。

 「拝啓 安倍晋三さま」で始まるこの社説も首相の豹変は「大いに歓迎すべきこと」という。だが、続きはこう。

 「『これじゃ朝日新聞の主張と変わらないよ』。旧来の安倍さんに期待した人たちからは不満も聞こえてきそうです」

 ここに、朝日のおごりを感じないわけにはいかない。政権発足前から「タカ派首相の危うさと不安」を最も書き続けてきた新聞は朝日だ。当時私は、まだ何もしていないうちから、ここまで騒ぎ立てるのはフェアでないと思っていたが、修正すると今度は嫌みのオンパレードである。

 いくらNHKの番組改変問題をはじめ首相と対立してきたとはいえ、私には「どうだ、朝日の歴史認識の正しさが分かったろう。ざまを見ろ」と言っているようにしか聞こえない。

 ここからは邪推。本当は朝日は首相の軌道修正が悔しかったのではあるまいか。もっとイケイケドンドンの安倍首相らしさを出してもらった方が批判がしやすいのに……そんな思いが行間ににじみ出ている気がするがどうだろう。

 メディアは謙虚で素直でありたいと私はいつも思っている。


朝日新聞【社説】2006年10月12日(木曜日)付

ニュー安倍 君子豹変ですか

 拝啓 安倍晋三さま

 首相に就任されて半月がたちました。組閣人事に始まって所信表明演説、国会論戦、中国、韓国訪問、そして北朝鮮の核実験発表への対応と、目まぐるしいばかりの毎日です。

 テレビに映る安倍さんの表情からは、緊張感と充実ぶりが伝わってきます。

 半月前を振り返ると、私たちは不安でいっぱいでした。

 なぜかと言えば、首相になるまでの安倍さんの言動が、私たちの考え方とあまりに隔たっていると思ったからです。歴史認識や外交、教育、安全保障など国の基本にかかわることばかりでしたから、真正面から論戦を挑まざるを得ない。そんな覚悟を固めていました。

 けれど目下のところ、私たちの心配は杞憂(きゆう)だったようです。

 首相になると、先の大戦の「植民地支配と侵略」を謝罪した村山首相談話を受け継ぐと表明しました。総裁選では、何度ただされても言を左右にしていたのがウソのような変貌(へんぼう)ぶりです。

 従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた河野官房長官談話も、すんなり認めました。外交の積み重ねや基本の歴史認識をゆるがせにしなかったことが訪中、訪韓を成功に導いたと思います。

 「ニュー安倍」の驚きは続きます。

 北朝鮮が核実験を発表するや、日本の核保有の可能性を明確に否定しました。首相のブレーンが主張する核武装論とはまったく違う立場です。同時に、歴代自民党政権の非核政策を継ぐまっとうな主張でもあります。

 肝いりの教育再生会議のメンバーを見ると、勇ましい保守派からの起用は限られ、バランスを考えた多彩な顔ぶれに落ち着きました。

 君子は豹変(ひょうへん)す、と申します。

 国政を担うことの責任感が安倍さんをわずかな期間に成長させたとすれば、大いに歓迎すべきことです。

 「これじゃ朝日新聞の主張と変わらないよ」。旧来の安倍さんに期待した人たちからは不満も聞こえてきそうです。

 安倍さんは国会答弁で「私が今まで述べてきたこととの関係で批判はあるだろう。甘んじて受ける」と軌道修正を認めました。残念なのは、あれほどこだわってきた持論をなぜ変えたのか、その説明が足りないことです。

 総裁選では党員向けに右寄りの発言をし、首相になると一転、ソフト路線で支持率を上げ、参院選を乗り切る。地金を出すのは政権が安定してから……。そんな邪推をする人も出てきそうです。

 「闘う政治家」を目指す安倍さんですから、よもやそんな姑息(こそく)な戦術を取るとは思えません。持論を変えた理由を一度、国民にきちんと説明してはいかがでしょう。安倍さんに一票を投じた党員たちも聞きたいのではないでしょうか。

 正しさを見極め、豹変する。そのことは、決して恥ずべきことではないのですから。敬具