代弁者
新聞はあくまで事実の報道という形で、国民を一定の方向に追いやることができますが、さらにその限度を超えて、最初から「世論はこうだ、こうだ」と国民の頭上におっかぶせていくとなると問題です。ことに一般の国民は難解拙劣な政治記事を読まずに、見出しや煽情的な社会面を読みがちですから、そういう工作は易々たるものです。もちろん、国民の大部分は動かされはしませんでした。
─― 福田恆存(『輿論を強ひる新聞』)
朝日新聞の暴走が目に付く。
反対なら反対で良い。しかし世論のねじ曲げはやめていただきたい。
国民の代弁者を装うのは大罪である。
「『社説』首相年頭会見 私たちこそ理解できぬ」(朝日新聞)
→ http://www.asahi.com/paper/editorial20060105.html
これほど理解力が足りない人が、内閣総理大臣を続けていたのだろうか。そう思いたくもなるような光景だった。
年頭の記者会見で、小泉首相は自らの靖国神社参拝に対する内外の批判について、5回も「理解できない」を繰り返した。
「一国の首相が、一政治家として一国民として戦没者に感謝と敬意を捧(ささ)げる。精神の自由、心の問題について、政治が関与することを嫌う言論人、知識人が批判することは理解できない。まして外国政府が介入して、外交問題にしようとする姿勢も理解できない」
理解できない言論人、知識人とは、新聞の社説も念頭に置いてのことだろう。全国の新聞のほとんどが参拝をやめるよう求めている。「理解できない」と口をとがらせるよりも、少しは「言論人」らの意見にも耳を傾けてはどうか。
私たちは、一般の国民が戦争で亡くなった兵士を弔うために靖国に参る気持ちは理解できると繰り返し指摘してきた。
深刻なのは、9月に首相が任期を終えた後も、こうした事態が続く可能性があることだ。
たとえば、ポスト小泉と目される一人、安倍晋三氏は、官房長官に就く前に月刊誌にたびたび登場し、「だれがリーダーとなったとしても、国のために尊い命を犠牲にした人たちのために手を合わせることは、指導者としての責務だと思う」と首相の参拝を強く支持してきた。
次の首相を選ぶ自民党総裁選が控えている。荒れ果ててしまったアジア外交をどう立て直すのか。その具体策こそが問われるべきであるのは、だれにでも理解できることだ。
日経新聞の世論調査では、内閣支持率は上昇している。
「(12/26)内閣支持率、59%に上昇・本社世論調査」(日本経済新聞)
→ http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt22/20051226AS1E2600J26122005.html
朝日新聞は首相が嫌いなのかも知れないが、国民は支持してることを忘れてはならない。
また、ポスト小泉の安部晋三氏も圧倒的な支持率を得ている。
国民の声を無視しているのは朝日新聞の方ではないか。
理解していないのは朝日新聞の方である。
「(12/26)「ポスト小泉」、安倍氏が43%でトップ・本社世論調査」(日本経済新聞)
→ http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt22/20051226AS1E2600K26122005.html
日本経済新聞社の世論調査で、来年9月に自民党総裁任期を迎える小泉純一郎首相の「次の首相」にふさわしいのは誰かを聞いたところ、安倍晋三官房長官が43%と圧倒的な1位を維持した。他の「ポスト小泉」候補への支持が低迷するなか安倍氏は前回調査より2ポイント上昇した。望ましい政権の枠組みについては、自民、公明両党の連立政権と自民、民主の「大連立」に期待する声が拮抗(きっこう)する結果となった。
安倍氏への支持は6月調査の34%から、内閣改造直後の前回11月調査で41%に上昇。内閣の要で、スポークスマン役でもある官房長官職を無難に務めていることが高い人気の理由とみられる。安倍氏は26日、日本経済新聞に「光栄なことだが、おごることなくさらにしっかりと実績を積んでいきたい」と語った。
男女ともに43%が安倍氏を支持し、20歳代から70歳以上までの全年代でトップ。職業別でも全区分で首位だった。支持政党別では、自民支持層の55%、公明支持層の45%の支持を獲得。民主党支持層からも36%の支持を集めた。
国民の代弁者を装うのは北海道新聞も同じ。
http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20051018
「産経抄」(1/6)
→ http://www.sankei.co.jp/news/060106/morning/column.htm
▼寒いといえば、五日付の「私たちこそ理解できぬ」と題した小泉首相の靖国神社参拝を批判した朝日新聞の社説は、読み返すほどに身震いがくるような内容だった。靖国参拝を批判するのは勝手だし、中国や韓国の立場を戦没者のご遺族よりも重視するかのような言論も自由だが、「全国の新聞のほとんどが参拝をやめるよう求めている」というのは誤植ではないかと何度も見直した。
▼確かに戦前戦後の一時期、かの新聞が業界のリーダー的な存在であり、部数でも日本一だったころがあった。だが今や朝日の言説に「ほとんどの新聞」や「言論人」が肯(うなず)く時代ではない。言論人イコール朝日人という論法は理解できない。第一、「私たち」とは誰なのか。
▼深い雪もいつかはとけ、豊かな実りをもたらす。必要なのは寒風に立ち向かう気構えと春を待つ忍耐心だ。戌年の今年、小欄は大いにほえるつもりだが、どこかの国の歓心を買おうとしているようには見られぬよう、心したい。
『小泉総理大臣年頭記者会見』 http://www.kantei.go.jp/jp/koizumispeech/2006/01/04press.html
私は断言する。新聞はこの次の一大事にも国をあやまるだろう。
─― 山本夏彦(『何用あって月世界へ』)
「■【主張】首相年頭会見 中韓の対応批判は当然だ」(産経新聞)
→ http://www.sankei.co.jp/news/060105/morning/editoria.htm
小泉純一郎首相は年頭記者会見で内政、外交の諸懸案に臨む方針を表明した。外交に関し、首相は日米同盟と国際協調を貫くとともに、自らの靖国神社参拝を理由に首脳会談を拒否する中国と韓国の対応を厳しく批判した。
中韓両国は首相の靖国参拝を就任以来、反対している。昨秋の例大祭に首相が参拝した以降は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などでの首脳会談にも応じようとしていない。
首相の靖国参拝は戦没者を慰霊するためのものであり、世界各国で行われている戦死者慰霊儀式と変わりない。小泉首相が「外国政府が心の問題に介入して、外交問題にするのは理解できない」と語った通りである。
内閣府が昨年末、発表した「外交」世論調査で、中国に「親しみを感じない」は前年比5・2ポイント増え、63%と過去最高を記録した。韓国に「親しみを感じる」は51%あるものの、前年比5・6ポイント減だった。硬直化した両国の姿勢も原因と考えられる。中韓は靖国参拝という日本の国内問題に内政干渉する愚に気付くべきだろう。