其疾如風、其徐如林、侵掠如火、如動如山
「07年大河ドラマは『風林火山』、初の井上靖原作」(読売新聞)
→ http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20050905i513.htm
NHKは5日、2007年放送の大河ドラマとして、「風林火山」を制作すると発表した。
原作は、同年に生誕100年を迎える井上靖さんの同名の歴史小説。戦国時代、最強の軍団といわれた甲州武田軍の軍師・山本勘助を通して、夢と野望、愛と憎しみが渦巻く乱世の人間模様をダイナミックに描く。井上さんの小説が大河ドラマの原作になるのは初めて。
武田信玄が描かれるのは、69年の「天と地と」、88年の「武田信玄」以来、3作目。脚本は、「てるてる家族」などの大森寿美男さんが担当する。
武田信玄の旗印、象徴となっている“風林火山”。言うまでもなく『孫子』からの引用です。
「其の疾(はや)きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)するは火の如く、動かざることは山の如し。」
「進攻にあたっては風のようにはやく、とどまれば林のように静かに、また敵地の侵掠を開始すれば、燃える火の勢いをもってし、守備するや山のように不動である。それが戦陣にある軍の態勢でなければならない。」(諸橋轍次『『中国古典名言事典』)
・「兵は詭道(きどう)なり。」
戦争は、謀略を用い、敵を欺く道である。常道ではない。
・「兵は拙速を聞く。未だ巧みの久しきを睹(み)ず。」
戦いは、たとえ拙劣でも速決が大事である。いかに戦争巧者でも、長引いて成功したためしはない。
・「兵は勝ちを貴びて、久しき貴ばず。」
戦争で大事なのは勝つことである。だらだらと戦うことではない。
・「兵を用うるの法は、国を全うするを上と為し、国を破ること之れに次ぐ。」
戦争は敵国を滅亡させないで勝ちをおさめるのが最上である。敵国を破滅させてしまうのは、真に止むを得ない場合だけだ。
・「百戦百勝は、善の善なる者に非(あら)ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」
戦えば必ず勝つということは、最上の用兵ではない。戦わずして敵を屈服させることこそ最善である。
・「上兵は謀を伐つ。其の次は交わりを伐つ。」
上手な戦法とは、敵の謀略を察して、これを破ることだ。これに次ぐ戦法は、当面の敵が交わっている国を離間させる、つまり孤立をねらうことだ。
・「彼を知り己を知れば、百戦殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば、一勝一負す。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」
敵情を知り、同時にわが力をも知る場合は、戦いに敗れることはない。敵情を知らず、ただ自軍の実情だけ知って戦うとき、勝敗は半々である。敵情も知らず、自軍のことも知らずして戦う者は、戦いの度に敗亡の危険をともなう。
・「善く戦う者は勝つとは、勝ち易きに勝つ者なり。」
善く戦う者、即ち善戦する者は勝つ、という言葉があるが、それは、勝ち易い、必勝の見込みのある相手と戦って勝つことを言ったものである。これが真の勝ちで、一か八かで勝つのは本物ではない。勝つ見込みのない戦争をする者は必ず失敗に終わる。
・「戦いは、正を以て勝つ。奇正の変は、窮むるに勝(と)うべからず。」
合戦の場合は正々堂々の陣を張って戦い、奇襲を受けた場合には、ただちに応変の処置をとって、これに勝つべきものである。こうした奇正応変の道は複雑多様で、極め尽くせないほどである。
・「兵の形は水に象(かたど)る。水の行くは、高きを避けて下(ひく)きに趨(おもむ)く。兵の形は、実を避けて虚を撃つ。」
軍勢の動きは、水の流れに例えるべきだ。水は高所を避け低地を選ぶ。戦いもまた、相手の主力を避けて手薄の所を撃つべきである。
・「君命も受けざる所あり。」
戦陣の指揮者は、君主の命令であっても、受け付けないことがある。敵情によって応変の処置が必要だからである。
・「敵近くして静かなる者は、其の険(けん)を恃(たの)むなり。遠くして挑戦する者は、人の進まんことを欲するなり。」
近くにありながら、敵が静かで、動く気配がないときは、その地形の険阻(けんそ)を頼みとしているからである。また、遠いところにおりながら、しきりに戦いを挑むのは、こちらの進出を待ち設けている場合である。油断してはならない。
・「主は怒りを以て師を興すべからず、将は慍(いきどお)りを以て戦いを致すべからず。」
主君は、自分一個の怒りをもって、戦争を起こすことがあってはならない。大将は、敵に対する一時の憤慨の感情をもって、戦いにのぞんではいけない。いずれも大局を誤ることだ。
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