NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

一日一言「持ちつ持たれつ」

四月十九日 持ちつ持たれつ


 この世の中は、すべての人々が働いていて維持されている。老いも若きも男も女もそれぞれの本分を尽くしているからこそ、世の中はうまく稼働している。それぞれの務めには上下や、貴いものや卑しいものがあっても、人間は持ちつもたれつの世の中で、位の高いのを誇らしげにするのは、位の低いのを恥じるのと同じで愚かなことである。位を自慢すれば卑しいものとなり、低いことに屈しなければその位は貴いものとなる。


  薪とる山がつ(賤)なくば都なる
      宿の煙もいかで立つべき

── 新渡戸稲造(『一日一言』)


山本周五郎語録。

―― 意地や面目を立てとおすことはいさましい、人の眼にも壮烈にみえるだろう、しかし、侍の本分というものは堪忍や辛抱の中にある、生きられる限り生きて御奉公をすることだ、これは侍に限らない、およそ人間の生きかたとはそういうものだ、いつの世でも、しんじつ国家を支え護(もり)立てているのは、こういう堪忍や辛抱、―― 人の眼につかず名もあらわれないところに働いている力なのだ

── 山本周五郎『樅ノ木は残った』

樅ノ木は残った (上) (新潮文庫)

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