NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

“A MOONSHINE”

皆既月食:夜桜と競演、珍しく 次は18年1月」(毎日新聞
 → http://mainichi.jp/select/news/20150405k0000m040087000c.html

 満月が地球の影にすっぽりと隠れる皆既月食が4日夜、東日本を中心に観測された。桜が見ごろの時期と重なるのは珍しい。次に日本で見られるのは2018年1月31日。

 皆既月食は、太陽と地球、月が一直線に並ぶことで生じる。太陽光が地球の大気によって屈折・散乱して、赤い光だけが月に届くため、赤銅色に見えるのが特徴で、前回は昨年10月に起きた。

 この日、東の空に上がった月は午後7時15分から欠け始め、同8時54分から12分間、皆既食になった。

 桜の名所として知られる宇都宮市八幡山公園では、大勢の花見客が夜桜と皆既月食の競演を楽しんだ。

 公園内の約800本の桜はちょうど満開となり、3日からはぼんぼりも点灯されている。花見客らは桜の下で雲が切れるのを待ち、ようやく顔を出した月が欠けた状態から皆既食になると、「赤くなった」と歓声を上げていた。


「赤み帯びた満月、南東の夜空に…皆既月食」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/science/20150404-OYT1T50093.html


タルホ。

 『A MOONSHINE』

 Aが竹竿の先に針金の環を取り付けた
 何をするのかとたずねると 三日月を取るんだって
 ぼくは笑っていたが きみ おどろくじゃないか その竿の先に三日月がひッかかってきたものだ
 さあ取れたと云いながら Aは三日月をつまみかけたが 熱ツッと床の上へ落としてしまった すまないがそこのコップを取ってくれって云うから 渡すと その中へサイダーをいれたのさ
 どうするつもりだって問うと ここへ入れるんだって そんなことしたらお月様は死んでしまうよと云ったが なあに構うものかと鉛筆で三日月を挟んで コップの中へほうりこんだ
 シャブン! ってね へんな紫色の煙がモヤモヤと立ち昇った それがAの鼻の孔へはいったもんだ 奴(やっこ)さんハクション! とやる つづいてぼくもハクション! そこで二人とも気が遠くなってしまった
 気がつくときみ 時計は十二時を廻っている それにおどろいたのは三日月のやはり窓のむこうで揺れていたことだ
 Aは時計の針と三日月とを見くらべてしきりに首をふっていたが ふとテーブルの上のコップに気づいて顔色を変えた コップの中には何もなくなっているのだ 只サイダーが少し黄色くなっていたかな Aはコップを電燈の下ですかしながら見つめていたが やにわに口のそばへ持って行った
 止(よ)せ! 毒だよとぼくは注意したが 奴さんは構うもんかと云って その残りのサイダーをグーと飲んじまった きみそれからだよAがあんなぐあいになっちまったのはね
 でもそれからぼくは いくら考えても判らないものだからS氏のところへ行って 話したんだ
 デスクの前でS氏は ホウホウと云って聞いていたが
 まさかと云うから ぼくは
 いや現に眼の前に見たことですよって云うと S氏は フンそれでその晩のお月様は照っていたかいって聞くんだ ぼくは
 そりゃすてきな月夜で そこらじゅう真青でしたと云うと
 S氏はシガーの煙を環に吐いて
 ムーンサンシャインさ! って笑い出したのさ
 いったい話はどうなっているんだって云うのかね? そうさ それが今日に至るまでも判然としないものだから きみにきいてみようと思っていたのだよ

 ではグッドナイト! お寝(やす)みなさい 今晩のあなたの夢はきっといつもとは違うでしょう

── 稲垣足穂『一千一秒物語』

一千一秒物語』(松岡正剛の千夜千冊) http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0879.html
一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語

一千一秒物語