NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

正気と狂気の間

イスラム国参加準備の北大生、フリー記者に『人殺してみたい』『イスラムに興味ない』」(北海道新聞
 → http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/567255.html

 シリアの過激派組織「イスラム国」に参加しようとして6日に警視庁公安部の事情聴取を受けた26歳の男子北大生=休学中=について、8月以降、この学生に会って話をしたことがあるフリージャーナリストの常岡浩介さん(45)=東京在住=は7日、北海道新聞の取材に対し「北大生は『人を殺してみたい』と言っていた」と証言した。

 常岡さんによると、北大生は理数系で、数カ月前に「学校も、家族も、携帯も捨ててシリアに行くために上京した」とされる。イスラム法学者の紹介で知り合った常岡さんの取材に対し、「日本社会のフィクション(虚構)が嫌になった。日本では人を殺すことは悪だが、イスラム国では正義になる。戦闘に参加して人を殺してみたい」などと話したという。

 ただ、「シリアに特に関心はない」「イスラムに興味はない」とも答えたといい、常岡さんは「北大生は自分の内面の問題を解決するために日本を離れたいと思ったようだが、本気でイスラム国の戦闘に加わるつもりだったかどうかは疑問を感じた」と話している。

「北大生、イスラム国参加計画 私戦予備・陰謀容疑、警視庁が聴取」(北海道新聞
 → http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/567144.html
「北大生、8月にもシリア渡航企て イスラム国参加で」(北海道新聞
 → http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/567164.html


社会が悪い、国が悪いと逃げる前に、為すべきことがあるのではないですか。

 青年は先づ「ひとり」であることが大切だ。さうして、自分とは何者であるか、何を欲し、何を愛し、何を憎み、何を悲しんでゐるか、それを自覚し、そして自分自身を偽らぬことです。他人が正しくないと云って憤るよりも、自分一人だけが先づ真理を行ふことの満足のうちに生存の意義を見出すべきではないですか。郵便配達夫は先づその職域に於て最善の責務を果すことです。それもできずに、道義退廃だの政治の改革だのと騒いでも駄目です。私は結社や徒党はきらひで、さういふものゝ中でしか自分を感じ得ぬ人々は特にきらひなのです。

 何物を破壊する必要もない。正しいもの、美しい物を造ることによって自ら破壊は行はれるでせう。自らさゝやかな真理を行ふことの自足と追求が大切だ、徒に考へることも不可で、たゞ考へて埒のあくものではなく、まづ正しく行ひ、然してその行ふところを内省して、そこから考へる生活と、次の行為への発展をもとむべきです。諸氏が真に国を憂ふるなら、道は近きにあり、先づその職域に於て本分をつくし、余りあるときに発疹チフスで仆(たお)れた偉大なる学徒の如くであって欲しい。徒に徒党を結ぶ必要もなく、例の大人物達に教へを仰ぎ講話などを承る必要は毛頭ありません。重ねて言ふ、大人はずるく、青年は純潔です。君自身の純潔を愛したまへ。

── 坂口安吾『青年に愬ふ―大人はずるい―』


正統派保守思想家、チェスタトンは言います。

 正統は何かしら鈍重で、単調で、安全なものだという俗信がある。こういう愚かな言説に陥ってきた人は少なくない。だが、実は、正統ほど危険に満ちたものはほかにかつてあったためしがない。正統とは正気であった。そして正気であることは、狂気であることよりもはるかにドラマチックなものである。正統は、いわば荒れ狂って疾走する馬を御す人の平衡だったのだ。ある時はこちらに、ある時はあちらに、大きく身をこごめ、大きく身を揺らせているがごとくに見えながら、実はその姿勢はことごとく、彫刻にも似た優美さと、数学にも似た正確さを失わない。

── G.K.チェスタトン『正統とは何か』

正気と狂気の間―社会・政治論

正気と狂気の間―社会・政治論