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「『絶対零度以下の物質』作成に成功! 従来の理論、崩される」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/wired/news/130110/wir13011011240000-n1.htm

 ミュンヘン大学(LMU)の研究者らが、絶対零度より低温の量子気体を作り出すことに成功した。

 この超低温の物質は、レーザーと磁場を使ってカリウム原子を格子状に配列したものだ。論文は1月3日付けで『Science』誌に掲載された。

 『Nature』誌の記事によると、研究チームは磁場を操作することで、カリウム原子を互いに反発しあうのではなく互いに引きつけあわせ、絶対零度以下における気体の特性を明らかにすることに成功したという。

 「原子は、その最も安定した最も低エネルギーな状態から、可能な限り最も高エネルギーな状態へと瞬時に転換される」と、ミュンヘン大学の物理学者、ウルリッヒ・シュナイダーはNature誌の取材に対して述べている。「谷間を歩いていたら、突然山頂に立っていることに気がついたような感じだ」

 絶対零度は従来、温度の理論上の下限と考えられていた。温度は物質粒子の平均エネルギー量と相関しているため、絶対零度においては粒子のエネルギーもゼロだと考えられていた。

 絶対零度を下回ると、物質はさまざまな奇妙な特性を示し始める。絶対零度を10億分の数ケルビン下回る温度で比較的安定した物質を生成できれば、この奇妙な状態の研究と解明が進み、うまくいけば他の革新にもつながる可能性がある。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)の物理学者で、(極低温におけるボース=アインシュタイン凝縮研究によって)ノーベル賞を受賞したヴォルフガング・ケターレは、今回の研究成果についてNature誌の取材に次のように述べている。「これを利用すれば、物質の新たな状態を実験室で作り出すことができるかもしれない」

 科学には誤りがつきものなのだ。その誤りを一つずつ取り除き、乗り越えてゆくのが科学なのである。誤った結論は毎度のように引き出されるけれども、それはあくまでも暫定的な結論でしかない。科学における仮説は、必ず反証可能なように出来ている。次々と打ち立てられる新たな仮説は、実験と観察によって検証されることになるのだ。科学は、さらなる知識を得るために、手探りしつつよろめきながら進んでいく。もちろん、自分が出した仮説が反証されれば嬉しくはないけれども、反証が挙がることこそは、科学的精神の真骨頂なのである。

── カール・セーガン『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』