自分で方法を見つけて世界へ飛び出せ!
「【産経抄】海外で仕事がしたかったら、自分で方法を見つけて飛び出せ 3月6日」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/180306/clm1803060003-n1.html
千葉県の網元の家に生まれ、明治の終わりに渡米した早川雪洲(せっしゅう)は、日本人国際スターの草分けである。もっとも、第二次大戦中にパリで消息不明となった。
ハリウッドに復帰するきっかけを作ったのが、『カサブランカ』で大スターとなったハンフリー・ボガートである。東京を舞台にした映画で、少年時代からあこがれていた雪洲との共演を望んだ。戦後まもなくに発見されていなければ、『戦場にかける橋』での名演も見られなかった。
メークアーティストとして、ハリウッドで引っ張りだこだった辻一弘さんは、2012年に映画の仕事から離れた。「君が引き受けてくれなければ出ない」。現代美術家として活動していた辻さんにメールを送ってきたのは、『ウィンストン・チャーチル』で、チャーチル英元首相を演じることになった名優のゲイリー・オールドマンさんである。
辻さんは、迷いながらも引き受けた仕事で見事アカデミー賞に輝いた。雪洲が届かなかったオスカー像を手にして、主演男優賞のオールドマンさんと喜びを分かち合った。チャーチルと似ても似つかぬオールドマンさんを、どのように変身させたのか。今月末に公開される映画で確かめるのが楽しみである。
京都市出身の辻さんは、『スター・ウォーズ』で映画の世界にあこがれ、高校生の頃から、特殊メークを志す。第一人者のディック・スミスさんに手紙で教えを請いながら独学を続けた。本場で力を試したい気持ちが募り、27歳で渡米する。
雪洲は『武者修行世界をゆく』と題した自伝を残す。「海外で仕事がしたかったら、自分で方法を見つけて飛び出せ」。辻さんも帰国するたびに、内向き傾向が強い若者にハッパをかけ、武者修行を勧めている。
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