一日一言「人をばかにしない」
十月四日 人をばかにしない
自信を持つことは立派なことだけど、他人をばかな人間と見て自分だけが賢いと思うことは、自分の考えが足りない証拠である。賢い者はどんな人からも学んで、人をばかにすることはしない。
智恵ありと思へるちゑにさへられて
あはれ誠のちゑを失ふ恐ろしき鞍馬愛宕の天狗より
なほ恐ろしき里の小てんぐ
翁に曰く、
本当のインテリなら、そのインテリぶりを誇示しない。知恵あるものは知恵をかくすと聞く。真のインテリというものがあるとすれば、それはインテリに似てない。第一、むずかしいことを言わない。横文字を口にしない。インテリ特有の言い回しは避けて用いない。言語がそうなら、衣服もそうである。ベレエ帽をかぶって目立とうとしない。むしろ、その時代の風俗と流行に従って目立つまいとする。
── 山本夏彦(『何用あって月世界へ』)