NAKAMOTO PERSONAL

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「ネガティブ思考」を断ち切る3つのステップ

「『ネガティブ思考』を断ち切る3つのステップ」(東洋経済オンライン)
 → http://toyokeizai.net/articles/-/154505

 今年は自分の心のために、こんな挑戦はどうだろう。頭のまわりに渦巻いている、ネガティブな思考を鎮めるのだ。


ネガティブ思考は当たり前

 人間は誰でも、(「くまのプーさん」のキャラクターで言うならば)ティガーよりもイーヨーのような傾向をもつ。つまり、よい経験よりも悪い経験のほうを、繰り返し思い返してしまうのだ。これは進化の結果であり、危険を避けて危機に素早く反応するのに役立っている。

 しかし、つねにネガティブな気持ちだと幸福感は妨げられ、ストレスと不安のレベルが上がり、究極的には健康にも影響が出る。他人よりもネガティブ思考に陥りがちな人もいる。心理学者で、認知行動療法を行うベック・インスティテュートの代表であるジュディス・ベックは、思考のスタイルには遺伝や子どもの頃の経験が影響すると言う。子ども時代にからかわれたり、いじめられたりすると、あるいは心的外傷や虐待などを経験すると、ネガティブな思考の癖がつく可能性があるのだ。また、2013年の研究によると、女性のほうが男性よりも思い悩みやすいという。

 「人間はネガティブな経験からは過剰に学習し、ポジティブな経験からはあまり学習しないようにできている」と、リック・ハンソンは言う。ハンソンは心理学者で、カリフォルニア大学バークレー校のグレイター・グッド・サイエンス・センターのシニアフェローだ。

 しかし、練習によりネガティブな思考のサイクルを断ち切り、制御することができるようになる。

 ネガティブ思考をやめるための最初のステップには、少し驚かされる。それは、ネガティブ思考を「やめようとしないこと」。昇進を逃したことや、大統領選挙の結果などをくよくよと考えているとしても、「このことを考えるのはやめよう」とは自分に言い聞かせないことだ。

 「自分の思考をコントロールしようとすると、心配や悩みはより深くなる」とベックは言う。

 その代わりに、自分はネガティブなサイクルに入っているということに気づき、それを認めよう。自分に向かってこう言うのだ。「私は良くなかった評価にこだわっている」「私は選挙の結果にこだわっている」。

 自分のネガティブなサイクルに気づき、それを受け入れることで、ネガティブ思考を鎮める方向に向かうことができる。「受け入れること」は、ストレス低減の手法であるマインドフルネス瞑想(めいそう)法の基本だ。マインドフルネスの効果を活用するには、毎日目を閉じて瞑想する必要はない。自分の思考に気づくよう、自分を促すのだ。その際に、すぐにその思考を変えようとしたり、批判的になったりしてはいけない。

 ネガティブな思考を受け入れると、その重さを減らすこともできる。心配している自分に怒ったり、心配はやめろと自分に言い聞かせたりすると、ネガティブな炎がよけいに燃え盛るだけだ。


友人へのアドバイスのつもりで考える

 ネガティブ思考を受け入れたら、次はそれに挑む。

 仕事での行き詰まりの例に戻ろう。昇進できなかったことで、あなたはおそらく自分の全般的な能力を不安に思い、自分を非難していることだろう。ここで、自分にこう問いかけよう。「一度失敗したからといって、なぜ実力がないということになるのか」。あるいは、こう尋ねてもよい。「私が本当はとても実力があると示せた仕事は、何だっただろうか」。

 ネガティブ思考に挑むのが難しかったら、次の方法を試してみよう。あなたではなく、あなたの友人にその悪い出来事が起こったと想像する。あなたは友人にどんなアドバイスをするだろうか。では、そのアドバイスを自分に言ってみたとしたら、どうだろうか。

 こうした方法はソクラテス式問答法として知られるが、オハイオ州立大学で行われた研究では、これを行うと大人のうつ症状を減らせることが示された。この研究では55人の成人が16週間の認知行動療法に取り組んだ。研究者らは治療の様子を写した映像を研究し、セラピストがソクラテス式問答法を用いれば用いるほど、うつ症状が減少することを発見した。ソクラテス式問答法により、患者は自分のネガティブ思考の妥当性を検証でき、より現実的で幅広い視点を獲得できたのだと、研究者らは論じた。

 時には、あなたの暗い考え方が有効である場合もあるだろう。しかし、未来に何が起こるかについての予測は有効でない。次のシナリオを検討してみよう。あなたのパートナーがあなたから離れ、別の相手のところに行ってしまったとする。ベックによると、「パートナーは、もう私を愛していない」という考えは正しいかもしれないが、「この先、誰も私のことを愛さない」という考えはおそらく正しくない。

 続いて、ネガティブ思考に立ち向かうために、非行動から行動に移ろう。あなたが「愛されていない」と感じて心配ならば、友人や家族と連絡を取ってみよう。仕事で不安を感じるなら、これまでの実績をリストにしてみよう。あるいは、あなたの親友に頼んで、あなたの良いところや優しい人間であるところをすべて手紙に書いてもらおう。そして、その手紙を毎日読み返すのだ。

 『幸せになれる脳をつくる』という本の著者でもあるハンソンは、ネガティブ思考を続けることで、何かを成し遂げられるのか自問してみるのもよいだろうと話す。競技場のトラックを走りながら自分の金銭的な問題について考え、解決策を見いだそうとしているのなら、それは役に立つかもしれない。しかし、トラックを何周もする間、次期大統領や海外の危機について頭を悩ませたところで、何も成し遂げることはできない。

 ネガティブ思考のために動揺したり、打ちのめされたりしていると感じるならば、一度深呼吸をし、続けてもう一度してみよう。深呼吸のような呼吸の練習は、ストレス反応を低下させ、不安な思いを鎮めるのに役立つ。


脳がネガティブ思考に慣れてしまわないように

 もしネガティブ思考のためにひどく苦しんだり、仕事やリラックスすることが難しくなっていると感じるなら、精神医療の専門家を訪ねてみることを検討しよう。特に、認知療法を専門とするセラピストが力になってくれるかもしれない(認知療法とは、しつこく不快な思考に対処するための実践的な方法を教えるものだ)。もし、あなたのネガティブ思考の源が、臨床的うつ病や強烈な不安であるならば、あなたの思考パターンの根本的な原因について専門家と話し、治療法を相談することを勧める。

 どのアプローチが自分にとって最も効果的か選別しているときにも、息抜きをして、張り詰めた心を思いやろう。

 「ネガティブに考え続けるほど、あなたの脳はネガティブに考えることに慣れてしまう」とハンソンは言う。彼はこう自問することを提案する。「私の思考は自分を強くしているだろうか。あるいは自分を壊しているのだろうか」。

幸せになれる脳をつくる 「ポジティブ」を取り込む4ステップの習慣

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 人生には解決法なんかないのだよ。人生にあるのは、前進中の力だけなんだ。その力を造り出さなければいけない。それさえあれば解決法なんか、ひとりでに見つかるのだ。

── サン=テグジュペリ『夜間飛行』

夜間飛行 (新潮文庫)

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