NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

オダサク

 私は目下、孤独であり、放浪的である。しかし、これも私の本意ではなかった。私は孤独と放浪を書きつづけているうちに、ついに私自身、孤独と放浪の中へ追い込まれてしまったが、孤独と放浪という任意の一点を設定した瞬間すでにその一点は、私にとっては宿命的なものだったのだ。だから、私は今私を孤独と放浪へ追いやった私の感受性を見極めてこれを表現しようと思っている。そしてまた、私をそうさせた外界というものに対決しようと思う。これらは、文学でのみ出来る仕事だからだ。この点、私は幸福をすら感じている。

── 織田作之助『私の文学』

今日は善哉忌。
昭和22年(1947)1月10日 織田作之助 没


天衣無縫 (角川文庫)

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