NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「外国語で自己主張する日本たれ」

「【正論 外国語で自己主張する日本たれ 比較文化史家・東京大学名誉教授・平川祐弘」(産経新聞
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/140124/edc14012403190000-n1.htm

 わが国の教授や外交官は外地で外国語を駆使して大いに弁じていると世間は思っているが、買いかぶりだ。間違えたら沽券(こけん)にかかわると思い、逆に萎縮する。英語で記者の質問に応じる本田圭佑選手の度胸はない。昭和の末年、私は東大で外国語教室主任を務めた。自分の体験に照らして実態をあけすけに語るのだから、信用してもらいたい。といっても、理工系や近代経済学などの学者は数式で相手と渡り合えばいいから、語学下手でも気が楽らしい。中には飛び切りできるのがいる。高校時代に留学した連中だ。


 《和辻留学に見る話す難しさ》

 和辻哲郎は旧東大を代表した碩学(せきがく)だが、西洋留学中、会話した相手はドイツ人の下宿のおかみだけで西洋の友人はできなかったという(稲賀繁美 Japan Review 25、2013)。甚だ侘(わ)びしい。和辻が留学を切り上げて早く帰国した理由もその辺にありそうだ。あれだけドイツ語も読めた人がと不審な気もする。だが外国語は読むのはまだしも話すのは難しい。そこは、赤ん坊が親の言葉はわかってもなかなか口が利けないのと似ている。まして上手に書けない。その証拠に日本人の手になる外国語著書は少ない。

 日本が小国や敗戦国だった間はそれでも仕方なかった。だが日本がいつまでも外国語で自己主張をしなくてもいいのか。今の日本では、上級職合格のキャリア外交官となると語学下手でも馘(くび)にならず小国の大使までは出世できる。こんな現状は甘すぎはしないか。明治の外交官、林董(ただす)は英語で回想録を書いたが、そこまで努力する官僚は少ない。そもそも日本語で自伝を書くほど実のある一生を送らないのだから、外国語著述など望むべくもないのかもしれないが。

 では外国はどうか。米国社会は20代の初めの試験で生涯キャリアが保証されるほど甘くない。こんなことがあった。1977年、カーター大統領がポーランドを訪問した。通訳が下手で聴衆が失笑する。米国の名誉失墜だ。と翌日、ワシントン・ポスト紙が失態を演じた米国務省の通訳の名をあげ給料の金額まで記して責めた。そのトップ記事を見て、米国社会はきついと思った途端、「自分は日本の税金で米国の研究所に来ているが、それにふさわしい仕事をしているか」と自責の念にかられた。


 五輪招致プレゼンを教材に》

 だが、日本の大学も変わりだした。ルース前駐日米大使は帰国前に東大駒場で講演、学生たちと質疑を1時間近く英語で交わし、それに驚き喜んだという。日本の学生も外国人教師に接し外国体験を積む機会が増えたおかげだろう。

 皆が感心したのは国際オリンピック委員会(IОC)総会での五輪東京招致のプレゼンテーションだ。高円宮妃殿下のご挨拶(あいさつ)に始まる一連の外国語挨拶はテレビ視聴者も魅了した。入念な準備、英国人コンサルタントの指導、リハーサルの成果だが、主張に各自の個性が光った。片足切断でパラリンピックで活躍した佐藤真海選手は発音の上手下手より、真情が伝わった。安倍晋三氏の英語の一語一語には日本の宰相の重みがあった。わが国の外交史上、7人の男女が連係プレーでこれほど鮮やかに外国語を駆使して内外の人の心を打った例はない。そのパフォーマンスは英紙も絶賛した。

 2013年9月7日は日本外国語教育史上記念すべき日だ。あのビデオを繰り返し英語の教室で見せれば、次の世代も負けずに話すようになるだろう。外国語下手どころか日本人の英仏語が頗(すこぶ)る達者だったから、世界が驚いた。日本人のプレゼンテーションがこれほど揃(そろ)って見事だった例(ためし)はない。


 第二外国語学びバランスも》

 外国学会での講演体験に徴するに、日本人が複数の外国語を使うと必ず相手が感心する。英語だけでなく第二外国語ももっと学び、外国について三点測量するがよい。そうすれば一方的に位負けせず相手と自国とのバランスのとれた判断が下せるようになる。

 戦後日本の外国一辺倒の学者や記者は外国人と論争せず、外国を持ち上げては日本人に説教する、国内向けの国際人が多かった。しかし、外国語で外国人に向けて語る日本人は、自国の良さもおのずと話すようになる。真に国際人である日本人とは何か。三笠宮家の彬子さまは英国留学の意味について語っている。季刊誌『代々木』秋号から引用させていただく。

 「日本を出るまで、自分が日本人であるという意識をほとんど持つことはありませんでした。外国に行って初めて、そのことを強く感じました。当時、学部生で日本人は私一人だったので、日本に関する質問はすべて私に回ってきました。…やはり自分が海外に出る時は日本の代表なのだということを実感するようになりました。いかに自分が日本について知らなかったのかを思い知らされました。…また、日本に対するまちがったイメージが外国にはあるのだと感じました。…海外に向けても日本の姿をしっかりと発信していかなければいけないという思いも新たにしました」

『2014年01月15日(Wed) 「余は歴史に学ぶ」 』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20140115


誇るべき日本。

『2013年12月01日(Sun) .. and More Honesty in Japan!』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131201
『2013年11月14日(Thu) 道徳に就いて』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131114
『2013年10月15日(Tue) The Soul of Japan』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20131015
『2013年02月13日(Wed) 信頼される日本』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20130213
『2012年10月03日(Wed) LOVE! JAPAN』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20121003
『2012年04月18日(Wed) 夢の国』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20120418
『2011年08月26日(Fri) 「来た時よりも、美しく」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110826
『2011年08月22日(Mon) 日本の道徳心』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110822
『2011年08月20日(Sat) 日本スゴすぎ』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110820
『2011年07月07日(Thu) 最も親切な国』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110707
『2011年07月03日(Sun) 「日本や日本人のここを学びたい」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110703
『2011年06月29日(Wed) 韓国人の告白』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110629
『2011年06月28日(Tue) 「日本人の親切な態度はどこから来るの?」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110628
『2011年06月22日(Wed) 日本の発明品に驚き』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110622
『2011年03月28日(Mon) 『日本人は”違う”のか?』』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110328
『2011年03月25日(Fri) 日本人の対応礼賛』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110325
『2011年03月18日(Fri) 「やっぱり日本はスゲーな!」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110318
『2011年03月15日(Tue) 日本人が世界の人々にどう映ったか』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110315
『2011年03月14日(Mon) 強靱な日本』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110314
『2011年03月13日(Sun) 沈まない日本』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20110313
『2010年11月27日(Sat) 「I LOVE JAPAN!」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20101127
『2010年11月04日(Thu) 韓国人が日本で感じたこと』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20101104
『2010年10月24日(Sun) 日本 3』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20101024
『2010年10月22日(Fri) 日本 2』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20101022
『2010年10月21日(Thu) 日本』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20101021
『2009年12月30日(Wed) 武士道』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20091230