赤の祭典
数日前、ある組合が年末闘争のためのデモ行進をやっていた。おおきな赤旗が何本も通り、延々長蛇の列である。プラカードには、戦争準備のために使う金をこっちへよこせという「闘争的」な文句が書いてあった。
が、をかしなことに、行進をやっている列中の人々の大部分が一種の照れくささを感じているらしいことを私は発見した。まるで恐縮しているかのごとく、そこには隊列の外に自分の要求を強く押し出そうとする者の激しさも切実さも見られず、むしろおたがい肩をいだきあい、顔をのぞきあうような感じさえあった。その行進の主役は赤旗とプラカードであって、人間はただそれを運んでいるだけなのである。それでは自己の中の人間の権威がはずかしめられることになり、いきおい悪びれた表情で、おたがいに肩をよせあいたくもなるのだろう。
それと前後して、ニュース映画で証券取引所のストを見たが、この方は景気よく向う鉢巻であった。ストというと、きっと鉢巻だ。これもプラカードと同じく、少い闘争心をかきたてるもので、鉢巻がなくては形にならない気勢なのであろうか。そのスト隊員も、ニュース映画のカメラの前で、にやにやわらっているものが多かった。まことにわれわれは「平和民族」である。
メーデー。
労働者の祭典、らしい。
鉢巻をし、赤旗を掲げて雄叫びを上げ、徒党を組んで渋滞を引き起こす、デモ行進。
自己の要求のために他人の迷惑を顧みない人々。
目障り。
「“STOP!THE格差社会” 大通公園で『全道メーデー』」(BNN)
→ http://www.bnn-s.com/news/08/05/080501131249.html
「全道メーデー:ガソリン値上げ批判−−札幌・大通公園 」(毎日新聞)
→ http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20080501ddj041040006000c.html
「労働格差是正を 全道メーデー 次期衆院選へ気勢』」(北海道新聞)
→ http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/90337.html
『第79回全道メーデー開催!』(れんごう北海道) http://www.rengo-hokkaido.gr.jp/monthly/monthly_new_2008_0501_79mayday.html
『れんごう北海道』 http://www.rengo-hokkaido.gr.jp/
『道労連』 http://www.dororen.gr.jp/
安吾、かく語りき。
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「私は弱者よりも、強者を選ぶ。積極的な生き方を選ぶ。この道が実は苦難の道なのである。」
―― 坂口安吾『恋愛論』