義人
「その時歴史が動いた 『義に死すとも不義に生きず 〜会津戦争 松平容保 悲運の決断〜』」
→ http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2007_10.html#03
義の人である。
星亮一さんのことば。
当時の日本はですね、すべて長いものに巻かれろですよね、幕府の御三家だってですね、みんな薩摩・長州についちゃう訳ですよね、唯一、会津藩。会津藩の心情を深く理解した仙台、米沢、長岡、盛岡とかですね、その人たちが、会津の言うことはもっともなことだということで列藩同盟を作って応援した訳ですよね。ですから会津武士は、たとえ負けても我々には正義はあったと、決して無意味ではなかったと。それでもって戦いをしたというこのアイデンティティは、どんな風な時代になろうが、我々誇りを持って語り継いで行くんだと。それは歴史に大きく残ったということです。
世論が薩長、に傾き、長いものに巻かれていくる中、多大な犠牲を払いつつも義を通した。
福沢諭吉は自著『瘠我慢の説』の中で、廃滅する幕府を支えることの重要性を説きます。
幕府を見捨てることは、大病の父母を見捨てることと同じである。
死ぬことがわかっていても見捨てる訳にはいかない。
「廃滅の数すでに明(あきらか)なりといえども、なお万一の僥倖を期して屈することを為さず、実際に力尽きて然る後にたおるるはこれまた人情の然らしむるところにして、その趣を喩えていえば、父母の大病に回復の望みなしとは知りながらも、実際の臨終に至るまで医薬の手当てを怠らざるがごとし。これも哲学流にていえば、等しく死する病人なれば、望みなく回復を謀るがためにいたずらに苦病を長くするよりも、モルヒネなど与えて臨終を安楽にするこそ智なるがごとくなれども、子と為りて考うれば、億万中の一を僥倖しても、故(ことさら)に父母の死を促すがごときは、情において忍びざるところなり。」
「左(さ)れば自国の衰頽(すいたい)に際し、敵に対して固(もと)より勝算なき場合にても、千苦万苦、力のあらん限りを尽くし、いよいよ勝敗の極に至りて始めて和を講ずるか、もしくは死を決するは立国の公道にして、国民が国に報ずるの義務と称すべきものなり。すなわち俗にいう瘠我慢なれども、強弱相対していやしくも弱者の地位を保つものは、単(ひとえ)にこの瘠我慢に依(よ)らざるはなし。ただに戦争の勝敗のみに限らず、平生の国交際においても瘠我慢の一義は決してこれを忘るべからず。」
「そもそも維新の事は帝室の名義ありといえども、その実は二、三の強藩が徳川に敵したるものより外ならず。この時に当りて徳川家の一類に三河武士の旧風あらんには、伏見の敗余江戸に帰るもさらに佐幕の諸藩に令して再挙を謀り、再三挙ついに成らざれば退いて江戸城を守り、たとい一日にても家の運命を長くしてなお万一を僥倖し、いよいよ策竭(つく)るに至りて城を枕に討死するのみ。すなわち前にいえるごとく、父母の大病に一日の長命を祈るものに異ならず。かくありてこそ瘠我慢の主義も全きものというべけれ。」
“瘠我慢”とは義である。
『松平容保』(Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E5%B9%B3%E5%AE%B9%E4%BF%9D
『会津藩』(Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E6%B4%A5%E8%97%A9
「会津藩というのは、封建時代の日本人がつくりあげた藩というもののなかでの最高の傑作のように思える。300に近い藩の中で肥前佐賀藩とともに藩士の教育水準が最も高く、さらに武勇の点では佐賀をはるかに抜き、薩摩藩と並んで江戸期を通じての二大強藩とされ、さらに藩士の制度という人間秩序を磨き上げたその光沢の美しさに至ってはどの藩も会津におよばず、この藩の藩士秩序そのものが芸術品とすら思えるほどなのである。」
─― 司馬遼太郎
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