一日一言「男らしきは優しいこと」
一月二十七日 男らしきは優しいこと
承久元年(西暦一二一九年)今日は、源実朝が無残にも殺された日である。文武の道に秀だ青年であった右大臣実朝は、他の人々の怨みの犠牲になって、はかなくも殺されたけれど、彼の想いのほどは、その和歌に込められており、その自然観、その人生観は、男らしくて柔軟で、潔く忠実な志は、今なお、人の心の励みとなる。
大海の磯もとどろに寄する浪
われて砕けてさけて散るかも山は裂け海はあせなん世なりとも
君に二心(ふたごころ)我があらめやも<源実朝>
「男子は須(すべか)らく強かるべし、しかし強がるべからず。外(そと)弱きがごとくして内(うち)強かるべし。」
今後の男伊達は決して威張りの一方では用をなさぬ。内心剛(かた)くして外部に柔らかくなくてはならぬ。むかしの賢者も教えて曰く、
「人(ひと)剛(ごう)を好めば我(われ)柔(じゅう)をもってこれに勝つ」
と、曰く、
「柔能(よ)く剛を制す、赤子(せきし)に遇(あ)うて賁育*1(ほんいく)その勇を失う」と。
男子は須らく強かるべし、しかし強がるべからず。外弱きがごとくして内強かるべし。
負けて退(の)く人を弱しと思ふなよ知恵の力の強き故なり
とは、真の男子の態度であろう。
フリードリヒ・フォン・シラーに曰く、
勇敢なる男は、自分自身のことは最後に考えるものである。
*1:孟賁・夏育